1. 会社リタイア後に必要な資金を計算する
50代になると、退職後の生活について具体的に考える機会が増えてきます。
60歳以降の収入と支出のバランスを把握し資金計画を立てることは、将来の安心につながります
「年金だけでは足りない」と漠然と思っていても、実際にいくら不足するのかを把握する必要があります。
まずは、公的機関が実施した調査結果を参考に、ご自身の状況に当てはめられるかと照らし合わせてみましょう。
2. 65歳以降の生活費|いくら必要なのか?
国税庁の「民間給与実態統計調査」(2024年9月)によると、60歳以降は給与が大幅に下がることが分かります。
(引用:国税庁「民間給与実態統計調査」)
また、総務省の「家計調査(家計収支編) 調査結果」によると、
現役世代の二人世帯の家計収支は下記の通りで、勤め先からの給与収入が多い反面、
税金や社会保険料などの非消費支出がかなりの負担になっていることが分かります。
なお下記は世帯の家計収支であるため、夫婦の収入の合計額が示されています。
(引用:総務省「家計調査(家計収支編) 調査結果」)
一方で、65歳以上の夫婦で無職の世帯の家計収支は下記の通りで
その消費支出(主に生活費)は約26万円/月(312万円/年)とされています。
(引用:総務省「家計調査(家計収支編) 調査結果」)
社会を支える側から支えられる側へと立場が変わることで、非消費支出である税金や社会保険料が大幅に減少しています。
また、住宅ローンも完済している場合も多いため住居費も大きく削減されています。
さらに、子供が大学を卒業するため、教育費も不要になりました。
しかしながら、夫婦で受け取る年金の平均月額は約22.5万円(厚生年金+国民年金)であり、
毎月3.5万円(年間42万円)の不足が生じる計算になります。
この不足額を65歳以降の35年間(100歳まで)で考えると、42万円 × 35年 = 1,470万円が必要になります。
ただし、80歳以降は生活費がさらに減少するため、年金給付額(65歳からの満額給付)でほぼ賄えそうです。
この点を考慮し、65歳までに約700万円程度(42万円×15年=630万円+70万円の予備費)を準備すれば安心でしょう。
ほとんどの場合、退職金でカバーできるのではないでしょうか。
この標準的なケースがご自身にあてはまるのであれば、
会社リタイア後の資金面ではあまり心配する必要はありません。
3. 60歳から65歳までの収入と支出のバランス
ところで、60歳で定年退職後、多くの人が再雇用やアルバイトをして収入を確保します。
厚生労働省の「高年齢者雇用状況等報告」データによると、サラリーマンの約87%が同じ会社で再雇用されています。
(引用:厚生労働省「高年齢者雇用状況等報告」)
しかし、再雇用後の給与は大幅に減少し、一般に60歳定年前に対して最大4割程度下がると言われています。
仮に、定年時の年収が712万円(夫)を想定した場合、その年収は約430万円程度まで減少することを見込む必要があります。
妻がパートで非課税の範囲で働いているならば、約100万円の収入があるため、
60歳から65歳までは再雇用と妻のパート収入があればなんとか乗り切れる計算になります。
4. 定年60歳で完全リタイアするとどうなるか?
一方、60歳以降に完全リタイアする場合は話が変わってきます。
健康保険も自分で加入する必要があるため、年間の非消費支出は約90万円ほどになります
仮に、消費支出(生活費)が65歳以降と同じ26万円/月(408万円/年)の場合でも、
年金の前倒し給付を受けない限り60〜65歳の5年間で合計2,400万円を自分で準備する必要があります。
加えて先ほど説明した通り、65歳以降の分として約700万円が必要になり、
60歳までに合計3,100万円を準備する必要があります。
退職金だけではカバーしきれない額になりますね。
まとめ|65歳まで働くならば、多額の老後資金は必要ない
会社リタイア後に必要なお金は、働き方や生活スタイルによって異なることがわかりました。
✔ 再雇用を選べば、老後資金は700万円程度和えれば十分
✔ 60歳で完全リタイアする場合は3,400万円が必要
特に50代のうちに計画を立てておけば、余裕を持って老後を迎えられます。
次回は、「60歳で完全リタイアする場合の資金計画」について詳しくお伝えします!