FRL 自由研究ラボ

はじめての道具箱 — 壊さない・消さない

記録の書き出しと読み込み

— 作り直しで、記録を失わない —

道具は、AI に頼むたびに書き換わり、ときには丸ごと作り直されます。そのとき、何か月もかけてためた成績や履歴が、空に見えてしまうことがあります。この記事では、記録をファイルに「書き出して」取っておき、必要なときに「読み込んで」戻す考え方を、はじめての人向けに説明します。

この記事を読むとできること

  • 道具を作り直すと、なぜ記録が消えたように見えるのかが分かるようになります
  • 書き出すときと読み込むときの、守るべき決まりが分かるようになります
  • 書き出しと読み込みを AI に正しく伝えられるようになります

想定している使い方

ブラウザで開くチャット型の AI(Gemini や ChatGPT など)にコードを書いてもらい、 それを自分の Mac に保存して動かす使い方です。この記事の操作や画面の説明は、すべて Mac を前提にしています。

  1. 書き出しと読み込みとは
  2. 書き出すときの決まり
  3. 読み込むときの決まり
  4. よくあるつまずき
  5. AI への伝え方
  6. 確かめ方
  7. 関連する項目

読む目安:約8分 ・ 道具箱の項目 D6(壊さない・消さない)・ 図3枚

書き出しと読み込みとは何か ―― なぜ AI に伝える必要があるのか

書き出しとは、道具の中にたまった記録を、道具とは別のファイルとして取り出しておくことです。読み込みとは、そのファイルから記録を道具へ戻すことです。2つがそろえば、道具が作り直されても、記録を元に戻せます。

たとえば、クイズの道具で、問題ごとに「何回解いたか」「何回正解したか」「見直したい印を付けたか」を記録しているとします。

一方、道具のコードは、AI に頼むたびに書き換わります。ときには、「いちから作り直して」と頼むこともあります。

このとき、記録の置き場所や書き方が変わると、新しい道具は古い記録を見つけられません。画面を開くと、成績がすべて0に戻っているように見えます。

AI は、「道具が動くこと」を目標にコードを書きます。あなたの記録がどこにあり、作り直しで失われないかどうかは、頼まなければ気にしてくれません。そこで、最初から「記録を書き出せて、読み込めるようにして」と伝えておきます。書き出したファイルが1つあれば、どんな作り直しをしても、そこから戻れます。

✕ 書き出していないと 記録は道具の中 にだけある 道具を 作り直す 新しい道具は 場所を知らない 記録が空に 見える ○ 書き出して取っておくと 記録をファイルに 書き出しておく 道具を 作り直す ファイルを 読み込む 記録が 元通りに戻る 作り直しは同じ。差は、道具の外に記録の控えがあるかどうかです。

図の見方:上の段は、記録が道具の中にしかない場合です。道具を作り直すと、新しい道具は記録の置き場所を知らないので、成績が空に見えます。下の段は、あらかじめ記録をファイルに書き出してある場合です。作り直したあとにそのファイルを読み込めば、記録が元に戻ります。

書き出すときの決まり

書き出しで大事なことは3つあります。1つ目は、ファイルの名前に日付と時刻を入れることです。毎回同じ名前で書き出すと、2回目に1回目のファイルが上書きされて消えます。「昨日の状態に戻したい」ときに、昨日のファイルが残っていません。日付と時刻が入っていれば、書き出すたびに別のファイルができ、好きな時点のものを選んで戻せます。

2つ目は、記録を全部入れることです。成績だけでなく、見直しの印や、日ごとの学習量なども含めます。

3つ目は、保存する場所を決めておくことです。決めていないと、ブラウザの「ダウンロード」フォルダ(ブラウザの保存先)に入り、あとで探しにくくなります。たとえば iCloud Drive(Apple のクラウド保存場所。Mac と iPhone で同じファイルが見えます)の中に専用のフォルダを作り、書き出しはそこへ入れる、と決めておきます。

書き出すファイルは、JSON(データを入れる箱の形式のひとつ)にしておくと便利です。テキストエディット(Mac の標準のメモ帳のようなアプリ)で開いて、中身を目で読めるからです。

✕ 毎回同じ名前で書き出すと 学習記録.json ファイルは1つだけ。書き出すたびに、前のものが消えます。 ○ 日付と時刻を入れて書き出すと 学習記録_20261003_2105.json 学習記録_20261004_0930.json 学習記録_20261005_0815.json ← 最新 書き出すたびに、別のファイルが増えます。 好きな時点のものを選んで戻せます。

実際に使っている法律のクイズアプリには、タイトル画面に「履歴のバックアップ」の欄があり、「書き出す」「読み込む」の2つのボタンを置いています。欄には「アプリ更新で履歴が消えないよう、ときどき書き出して保存を」という注意書きを添えています。書き出すファイルの名前には日付と時刻(分まで)が入り、同じ分に2回書き出しても、前のファイルを上書きしません。Mac では、iCloud Drive の決まったフォルダに書き出されます。この作りは、のちにエージェント型コーディング(AI が Mac の中で直接作業する形。Claude Code)に移ってから加えたもので、チャットの AI の頃の話ではありません。

読み込むときの決まり

読み込みは、今ある記録を、ファイルの中身で置き換える操作です。足し算ではなく、差し替えです。選ぶファイルを間違えると、新しい記録が古い記録に置き換わってしまいます。そのため、読み込みの前に確かめる段取りを入れます。

まず、選んだファイルが読める形か、その道具の記録なのかを確かめます。違うファイルなら、その場で中止して、今の記録には触りません。次に、ファイルの中にどのくらいの記録が入っているか(解答の数や問題の数)を画面に見せて、「今の記録が置き換わります。よろしいですか」と尋ねます。

「よろしい」と答えたときだけ、記録を置き換えて保存し、画面を読み直します。保存まで済ませるのは、読み込んだだけで保存しないと、次に開いたときに元の記録へ戻ってしまうことがあるからです。不安なときは、読み込む前に、今の記録も書き出しておきます。そうすれば、読み込みを後悔しても、戻る先が残ります。

ファイルを選ぶ 確かめ1 読める形か、この道具の記録か (違う形式なら、ここで中止) 確かめ2 件数を見せて、置き換えてよいか尋ねる (やめるなら、ここで中止) 置き換えて保存する 画面を読み直す 中止したとき 今の記録には、まだ手を付けていません 置き換える前に、2回確かめます。

実際に使っているクイズアプリでは、読み込むファイルを選ぶと、まず履歴のファイルかどうかを確かめます。そのうえで、のべ解答数(これまでに答えた回数の合計)と問題の種類数を表示し、「現在の成績は上書きされます」と確認してから置き換えます。記録の書き方を変えたことがあるため、古い書き方のファイルも新しい書き方のファイルも、どちらも読み込めるようにしてあります。また、見直しの印は書き出しにも含めています。ただし、見直しの印を持たない古いファイルを読み込んでも、今ある印は消さない作りです。これも、エージェント型コーディングに移ってからの作りです。

よくあるつまずき

起きていることから探してください。

起きていること 原因 どうするか
道具を作り直してもらったら、成績がすべて0に戻って見える 新しい道具が、古い記録の置き場所や書き方を知らない 古い記録のファイルは、たいてい残っています。AI に、そのファイルの場所と中身の一部(先頭の数行)を貼って、「このファイルを読み込めるようにして」と頼みます
読み込んだら、今の記録が古い状態に戻ってしまった 読み込みは足し算ではなく差し替えなので、古いファイルを選ぶと古い状態になる 読み込む前に、今の記録も書き出しておきます。ファイル名の日付と時刻を見て、新しいものを選びます
書き出したはずのファイルが、どこにあるか分からない 保存先を決めておらず、ブラウザのダウンロードフォルダなどに入っている 「書き出したあとに、保存先とファイル名を画面に出して」と頼みます。保存先は専用のフォルダに決めてもらいます
書き出したのに、前のファイルが無くなっている 毎回同じ名前で書き出していて、上書きされた ファイル名に日付と時刻を入れてもらいます。同じ時刻に2回書き出しても、上書きしないようにも頼みます
読み込んだのに、一部の問題だけ記録が戻らない 記録を問題の文章と結び付けている道具では、問題の文章を書き換えると、別の問題として扱われる 問題の文章を書き換える前に、書き出しておきます。結び付け方は、1問1問に名札を付ける項目(B6)も参考になります

AI への伝え方

※ この道具箱は対話型コーディング(ブラウザの画面でチャットの AI と文章をやりとりして、コードを書いてもらうやり方)の前提です。 チャットの AI はあなたの Mac を見られないので、頼むのは「コードを書いて」、困ったら出た文字を貼って伝えます。 コツは、何を書き出すか、どこへ、どんな名前で書き出すか、読み込むときに何を確かめるかを、はっきり伝えることです。 下の文は、そのまま写すためのものではなく、言い方の見本です。

① 書き出しを頼むとき

「この道具の成績・履歴・見直しの印を、全部1つのファイルに書き出すボタンを付けて。ファイル名には日付と時刻を入れて、同じ時刻に2回書き出しても前のファイルを上書きしないで。保存先は、Mac の学習記録フォルダにして。ブラウザの画面だけでは決まったフォルダへ書けないなら、できないと先に教えて。書き出せたら、ファイル名と保存先を画面に出して。コードを書いて」

② 読み込みを頼むとき

「書き出したファイルを読み込むボタンも付けて。選んだファイルがこの道具の記録でなければ、その場で中止して、今の記録には触らないで。記録なら、解答の数と問題の数を画面に出して、『今の記録は置き換わります。よろしいですか』と確認して。よろしいと答えたときだけ、置き換えて保存して。直したコードを全部書いて」

③ 道具を作り直してもらう前に

「この道具を作り直してもらいたい。ただし、今ためている成績と履歴は失いたくない。作り直したあとも、これまでに書き出したファイルを読み込めるようにして。記録の書き方を変えるなら、古い書き方のファイルも読めるようにして」

うまくいかないとき

「書き出したファイルを読み込もうとしたら、画面にこう出た:(ここに貼る)。ファイルの先頭の数行はこう:(ここに貼る)。何が合っていないのか、教えて。今の記録を壊さない直し方でお願い」

確かめ方 ―― 書き出しと読み込みが本当に働くか

試す前に、まず今の記録を一度書き出して、取っておきます。これが保険になります。そのうえで、次の3つを順に確かめます。

  1. 1

    書き出して、ファイルができるのを見る。書き出しのボタンを押し、画面に出た保存先を Finder(Mac でファイルを見るためのアプリ)で開きます。日付と時刻の入った名前のファイルがあれば成功です。続けてもう一度書き出して、ファイルが2つになることも確かめます。1つのままなら、上書きされています。

  2. 2

    記録をわざと変えて、読み込んで戻るのを見る。問題を数問解いて、解答の数を増やします。そのあと、手順1のファイルを読み込みます。確認の画面に出る解答の数が、書き出した時点の数なら、正しいファイルを選べています。置き換えたあとの解答の数が、増やす前に戻れば成功です。

  3. 3

    違うファイルを選んで、断られるのを見る。記録ではない、関係のないファイルを選んで読み込みを試します。「この形式ではありません」のような知らせが出て、今の記録が変わらなければ成功です。