LAB 001 — GUIDE
AI に書かせた作業の記録が、自分のノートに勝手に溜まっていく。 そんな仕組みを、ターミナルを触ったことがない人でも作れるように、ゼロから順番に説明します。 つまずいても戻れるよう、各手順に「ここまでできたか確認する方法」を付けました。
約1時間
全部やる場合
5 STEP
手順の数
3段階
つなぎ方の深さ
macOS
13 以降
INTRO
AI にコードを書かせたり調べ物をさせたりしていると、便利さの裏で困ることが起きます。 やりとりの中身が、その会話の中にしか無いのです。 画面を閉じれば消え、別の Mac で開き直すこともできず、半年後に「なぜこう直したんだっけ」を思い出す手段がありません。
そこで、AI の作業場のとなりに Obsidian(自分のメモ帳)を置きます。 Obsidian は個人利用が無料のメモアプリで、日記・読書メモ・アイデア出しなど「第二の脳」的な使い方をする人が多い、 いわゆるメモ・ノートアプリの一種です。Apple のメモや Evernote と似た見た目ですが、決定的に違う点が一つあります。
Apple のメモや Evernote は、書いたメモをそのアプリだけが読める形にしまい込みます(クラウド上の専用データベースなど)。
一方 Obsidian のノートは、特殊な形式ではなく .md というただのテキストファイルです。
だから AI はそれを普通に読めるし、書き足せます。設定は要りません。置き場所を教えるだけです。
つなぐと、こうなります。
「直したら履歴を書いて」と一度決めておけば、AI が作業のたびに自分でノートへ追記します。書き忘れが無くなります。
日記・読書メモ・体調の記録。溜めてきたノートを AI が読んだ上で答えるので、一般論ではない返事が返ってきます。
ノートは iCloud や同期サービスで他の機械にも届きます。会話は運べませんが、ノートにした文脈は運べます。
※ この記事は macOS を前提に書いています(Windows でも考え方は同じですが、コマンドと許可設定の名前が変わります)。
WORDS
この先に出てくる知らない言葉は、実質この3つだけです。ここだけ読んでおけば、あとは手を動かすだけになります。
Mac に最初から入っている「文字で命令するための窓」です(アプリケーション → ユーティリティ → ターミナル.app)。 怖いものではなく、打った文字どおりにしか動きません。 この記事で打つのは全部で10行ほどです。どうしても抵抗がある人向けに、STEP 1 で画面だけで済ませる方法も紹介します。
Obsidian が「ノートの入れ物」と呼んでいるものですが、正体はただのフォルダです。
中に .md ファイルが入っているだけで、Obsidian を消してもノートは残ります。
この「特殊な形式でない」という点が、AI と相性がいい最大の理由です。
AI と外部のアプリをつなぐ共通の差込口の規格です。 Obsidian に差込口を付けると、AI が「ファイルを読む」だけでなく 「タグで探す」「今日の日誌を開く」「リンクを辿る」といった Obsidian らしい操作をできるようになります。 STEP 4 で扱いますが、無くても連携は成立します。難しければ飛ばして構いません。
PREPARE
| 要るもの | 中身 | 費用 |
|---|---|---|
| Mac | macOS 13 以降 / メモリ 4GB 以上 | — |
| Claude の契約 | Pro / Max などの有料プラン、または API の従量課金 | 月額または使った分 |
| Obsidian | 個人利用は無料 | 0 円 |
| 時間 | STEP 3 まで 30 分 / STEP 5 まで 1 時間 | — |
無料プランでは Claude Code は使えません。 ここだけは避けて通れない出費です。逆に言うと、必要なお金はこれだけで、あとは無料のもので組み立てられます。
STEP 1 — 目安 10分
キーボードで ⌘(コマンド)+ スペース を押し、ターミナル と打って Enter。
黒い(または白い)文字だけの窓が出れば成功です。この窓に文字を貼り付けて Enter を押す、それだけを繰り返します。
下の行をコピーして、ターミナルに貼り付けて Enter を押します。1〜2分で終わります。
curl -fsSL https://claude.ai/install.sh | bash
この1行は「Anthropic の配布サイトから導入用の手順書を取ってきて、そのとおりに実行する」という意味です。
入る場所は自分のユーザーフォルダの中(~/.local/ の下)なので、
管理者パスワードは要りません。Mac の他の部分には触りません。
新しく入れた道具の場所を、ターミナルがまだ知らない状態です。⌘Q で終了して開き直すと覚えます。 開き直したら、入ったか確かめます。
claude --version
2.1.241 (Claude Code) のように数字が出れば成功です。
command not found と出たら、まだターミナルを開き直していないか、導入が途中で失敗しています。
claude と打って Enter。初回はブラウザが開くので、契約している Claude のアカウントで承認します。
戻ってくると、下に入力欄のある画面になります。ここが AI との会話の場です。抜けるときは /exit と打ちます。
claude
✓ ここまでの確認:
ターミナルで claude と打つと会話画面が出て、「こんにちは」と打つと返事が返ってくる。
ここができていれば STEP 1 は完了です。
どうしてもターミナルが苦手な人へ。 Claude には デスクトップアプリ版(claude.com のダウンロードページから入手)もあり、 その中の「Code」画面で、この記事とまったく同じことがマウス操作だけでできます。 以降の手順で「ターミナルで打つ」と書いてある箇所は、アプリの入力欄に同じ文を打つ、と読み替えてください。
STEP 2 — 目安 10分
obsidian.md から macOS 版をダウンロードし、 アプリケーションフォルダへドラッグします。個人利用は無料で、アカウント登録も要りません。
起動すると「新規保管庫を作成」が出ます。名前は何でも構いません(この記事では brain とします)。
大事なのは置き場所です。後から動かすと連携の設定をやり直すことになるので、ここで決めておきます。
| 置き場所 | 向いている人 | 注意 |
|---|---|---|
| 書類フォルダの直下 | 1台の Mac で完結する人。迷ったらこれ | 特になし。つまずきが最も少ない |
| iCloud Drive | iPhone や別の Mac でも同じノートを見たい人 | 追加の許可が要る(下の注意) |
| Dropbox など | すでにその同期を使っている人 | 同期の競合ファイルが増えがち |
iCloud Drive に置く場合の2つの落とし穴(実際にやられました)
Obsidian の中で新しいノートを作り、名前を 作業記録 とします。中身は1行で構いません。
次の STEP で、このノートに AI が書き足せるかを試します。
✓ ここまでの確認:
Finder で Vault のフォルダを開くと 作業記録.md というファイルが見える。
Obsidian を通さなくてもファイルとして見える——これが連携できる理由そのものです。
STEP 3 — 目安 10分 / つなぎ方①
ここが本題です。そして拍子抜けするほど簡単です。 Vault はただのフォルダなので、その場所を教えるだけで連携は成立します。 プラグインも設定ファイルも要りません。まずこの段階を完成させて、必要を感じたら STEP 4 に進んでください。
正確な住所(パス)を手で打つ必要はありません。ターミナルに cd と半角スペースを打ってから、
Finder の Vault フォルダをターミナルの窓にドラッグ&ドロップすると、住所が勝手に入ります。そのまま Enter。
cd ← このあとにフォルダをドラッグ&ドロップして Enter
Claude Code は「起動したフォルダ」を自分の仕事場だと考えます。 Vault の中で起動すれば、その瞬間からノートは触れる状態です。
claude
会話画面に、そのまま貼り付けて試せる文です。
作業記録.md の一番下に、今日の日付の見出しと
「Claude Code とつながった」という1行を追記して。
他の行は変えないで。
すると 「このファイルを書き換えていいですか」と許可を求める表示が出ます。 内容(どこをどう変えるか)を読んで、問題なければ許可します。 勝手に書き換えられることはありません。ここが Claude Code の安全装置です。
Obsidian を開いたままなら、追記は画面上でリアルタイムに増えます。これが見えたら連携は完成です。
ここでノートが1枚も読めない、errno 81 や system error -81 といった見慣れない文字が出た場合、
原因はほぼ確実にフルディスクアクセスの未許可です。プログラム側からは絶対に解決できないので、人が設定します。
この許可はひとつで後の STEP 4 にも効きます。逆に、ここが抜けていると STEP 4 は 「プラグインが壊れているように見える」という分かりにくい形で失敗します。先に済ませておくのが得策です。
実際の使い方では、コードを書いているフォルダで作業しながら、記録だけ Vault に書かせたいはずです。 その場合は、起動するときに「このフォルダも触っていいよ」と渡します。
claude --add-dir ← このあとに Vault フォルダをドラッグ&ドロップ
毎回打つのが面倒なら、次の STEP 5 で「書かなくても分かっている状態」にします。
✓ ここまでの確認: 頼んだとおりにノートへ1行増え、Obsidian の画面にも出ている。 ここで一度やめても「連携できた」と言えます。 STEP 4 は便利さの上積み、STEP 5 は続ける仕掛けです。
STEP 4 — 目安 15分 / つなぎ方② 任意
STEP 3 までで、AI はノートを「テキストファイルの山」として扱えます。 ここでは、「Obsidian のノート」として扱えるようにします。 ノートが数十枚のうちは違いを感じませんが、数百枚を超えたあたりで効いてきます。
| やりたいこと | STEP 3 まで(フォルダ) | STEP 4 のあと(MCP) |
|---|---|---|
| ノートを探す | ファイル名と文字列の一致 | タグ・リンク・意味の近さで探せる |
| 今日の日誌に書く | 日付からパスを自分で組み立てる | 「今日の日誌」で開ける(無ければ作る) |
| 関連を辿る | できない | そのノートを参照している側を辿れる |
| 部分だけ書き換える | ファイル全体を読んで書き戻す | 見出しの下だけを狙って足せる |
このプラグインはObsidian の中で動きます。別のサーバーを立てたり、ノートをどこかへ送ったりはしません。
差込口は自分の Mac の中(127.0.0.1=自分自身)にだけ開きます。
設定 → MCP Connector → アクセス制御(Access control) を開くと、 ポート番号(27200 から 27205 のどれか)とトークン(合言葉の長い文字列)が表示され、 Claude Code 用の設定をそのままコピーできるボタンがあります。
トークンは鍵です。ノートやメモに貼らない、コミットしない、画面共有中に開かない。 万一見られたら、同じ画面から作り直せます(古い方は無効になります)。
ターミナルで次の1行を実行します(ここにトークン の部分と、ポート番号を自分のものに置き換えます)。
--scope user は「このフォルダだけでなく、どこで起動しても使える」という意味です。
claude mcp add --transport http --scope user obsidian \
http://127.0.0.1:27200/mcp \
--header "Authorization: Bearer ここにトークン"
claude mcp list
obsidian の行に Connected と出れば成功です。
会話中に /mcp と打っても状態を見られます。試しにこう頼んでみてください。
Obsidian のノートの中から「読書」に関するものを探して、
何が書かれているか3行でまとめて。
✓ ここまでの確認:
claude mcp list に Connected と出て、ノートを探してくる。
つながらない時に見る3つ
401 と出ます)STEP 5 — 目安 15分 / つなぎ方③
ここまでは「頼めば書いてくれる」状態です。ですが人は頼み忘れます。 そして記録は、忘れた日から価値が落ちていきます。 最後の STEP で、頼まなくても書く状態にします。実は、ここがいちばん効きます。
作業フォルダに CLAUDE.md という名前のファイルを置くと、
Claude Code は起動のたびに、頼まれなくてもその中身を読みます。
毎回説明していたことを、ここに一度だけ書いておく——それだけの仕組みです。
作り方は簡単で、会話画面で /init と打つとたたき台を作ってくれます。
中身は、次のような短い日本語で構いません(そのまま使えます)。
# このプロジェクトの決まり
## 記録の置き場所
作業の記録は Obsidian の Vault に書く。
Vault: ~/Documents/brain
書き込み先: app/作業記録.md
## いつ書くか
- コードを1行でも変更したら、指示を待たずに追記する
- 見た目だけの変更・設定の変更も省かない
- 日付の見出しは、新しいものを一番上に置く
## 書かないこと
- パスワード・鍵・合言葉の値そのもの
- 「そういう値を移した」という事実までは書いてよい
コツは短く、命令形で、「いつやるか」を書くこと。 「なるべく記録してください」のような書き方では効きません。「1行でも変更したら、指示を待たずに」まで書き切ります。
CLAUDE.md は毎回全文が読まれます。だから何でも書き足すと、肝心の指示がぼやけます。 詳しい手順(ノートの名前の付け方、書式、失敗した時の対処…)は、別の場所に置いて その作業をする時だけ読ませるのが正解です。
.claude/skills/記録を書く/SKILL.md
この形で置いておくと、Claude Code は「記録を書く」場面になったときだけ読みに行きます。 CLAUDE.md 側には「詳しい手順は .claude/skills/記録を書く/ にある」と1行書いておけば十分です。
何か小さな修正を1つ頼んでみて、こちらが何も言っていないのにノートへ追記されたら成功です。 追記されなければ、CLAUDE.md の書き方が弱いか、場所が違っています(起動したフォルダの直下にありますか)。
✓ 完成: あなたは「直して」としか言っていないのに、直した内容が日付つきでノートに積み上がっていく。 半年後のあなたが、それを読んで助かります。
TROUBLE
うまくいかないのが普通です。ここに載っている8つで、だいたい片が付きます。 左の列から、自分に起きていることを探してください。
| 起きていること | 原因 | どうするか |
|---|---|---|
claude: command not found |
ターミナルがまだ新しい道具の場所を知らない | ⌘Q で終了して開き直す。それでも駄目なら STEP 1-2 をもう一度 |
ノートが1枚も読めない/errno 81/system error -81 |
iCloud の中を読む許可が無い | フルディスクアクセスを与えて⌘Q して開き直す(STEP 3-4) |
| 追記したらノートの本文が消えた | iCloud が中身を預けていて、実体が空だった | Finder で「このMacにダウンロードを保持」。消えた分は Obsidian のファイル復元か Time Machine から戻す |
MCP が Failed のまま |
Obsidian が起動していない | Obsidian を開く。差込口は Obsidian の中にある |
401 と出て断られる |
合言葉かポート番号が今のものと違う | 設定画面で現在の値を見て、claude mcp remove obsidian の後に登録し直す |
| プラグインが検索に出ない | 制限モードが入ったまま/別の名前で探している | 制限モードをオフにして「MCP Connector」で探す |
| Vault の外のファイルを触ってくれない | 起動したフォルダの外は、既定では触らない | 起動時に --add-dir で渡す(STEP 3-5) |
| 頼まないと記録を書かない | CLAUDE.md の場所か、書き方が弱い | 起動フォルダの直下に置き、「いつ書くか」を命令形で書く(STEP 5-1) |
SAFETY
この連携で本当に怖いのは「誰かに攻撃されること」ではなく、 自分の道具が、自分の大事なものをうっかり外に出してしまうことです。 次の4つだけ決めておけば、当面は困りません。
ノートも、作業記録も、コミットの説明も、AI が残す文章はすべて後から誰でも読める場所です。 「鍵を保管場所に移した」という事実までは書いてよく、値は書かない。この線引きを CLAUDE.md に書いておきます。
AI に読ませた部分は、判断のためにサービス側へ送られます。
日記・体調・お金のように外に出したくないノートがあるなら、Vault を分けるか、
--add-dir で必要なフォルダだけを渡します。「全部見せておけば賢くなる」は、ここでは正しくありません。
MCP は便利なので、つい色々つなぎたくなります。ですが差込口は 外へ出ていく経路であると同時に、外から指示が入ってくる経路でもあります。 増やすときは1つずつ、「なぜ要るのか」を書き残してから。
許可を求める画面は、慣れると読まずに通すようになります。 増やす作業は流してよく、消す・置き換える作業だけは読む——そう決めておくと事故が減ります。 Obsidian の設定でファイル復元を有効にしておくと、さらに安心です。
FAQ
書き換えの前に必ず許可を求められ、どこをどう変えるかも表示されます。加えて Obsidian 側にもファイル復元の機能があります。心配なら、最初のうちは練習用の Vault を別に作って試してください。
考え方も STEP の並びも同じです。違うのは導入コマンド(PowerShell 用のものがあります)と、macOS 特有の「フルディスクアクセス」の話が不要になる点です。
Claude Code は Mac / PC の道具なので、iPhone では動きません。ただし結果のノートは iPhone の Obsidian で読めます。外出先で読み、家で書かせる、という分担になります。
この記事の範囲なら Pro で足ります。毎日長時間まわすようになったら上位プランを検討する、という順番で困りません。無料プランでは Claude Code が使えない点だけ注意してください。
読ませた部分は送られます。これは仕組み上避けられません。だからこそ「読ませる範囲を選ぶ」ことが実質的な防御になります。どうしても外に出したくない用途には、Mac の中だけで動く小さな AI を別に使う、という選択肢もあります。
Claude Code は導入したファイルを消すだけで元に戻ります。Obsidian も、アプリを消してもノートはフォルダに残ります。どちらも「戻れる」構成なので、気楽に試して構いません。
NEXT
つながったら、いきなり大きな仕組みを作ろうとせず、小さな用途をひとつだけ決めてください。 「直したら記録を書く」でも「読んだ本を1行足す」でも構いません。 続いた仕組みだけが残り、続かなかった仕組みは、どれだけ立派でも消えていきます。
CLAUDE.md に書く(忘れても効き続けます)※ 画面の名称やコマンドは、アプリの更新で変わることがあります。うまくいかない時は、各アプリの公式ドキュメントも併せてご確認ください。 この記事は筆者が自分の Mac で実際に組み立てた手順をもとにしていますが、動作を保証するものではありません。