はじめての道具箱 — データを整理する
— 表の上で直して、まとめて反映する —
何百ものファイルの名前を直したいとき、1つずつ手で直していては終わりません。この記事では、ファイルの名前を一覧表に書き出し、表の上で直して、まとめて実物に反映する考え方と、そのときに守る約束を、はじめての人向けに説明します。
この記事を読むとできること
想定している使い方
ブラウザで開くチャット型の AI(Gemini や ChatGPT など)にコードを書いてもらい、 それを自分の Mac に保存して動かす使い方です。この記事の操作や画面の説明は、すべて Mac を前提にしています。
読む目安:約13分 ・ 道具箱の項目 B2(データを整理する)・ 図4枚
ファイルそのもの(実物)を直接さわる代わりに、ファイルの名前を書き写した一覧表を作り、表の上で直してから、表のとおりに実物をまとめて直させる考え方です。
ファイルの名前を B1 のような決まり(【大】【中】【小】タイトル)に揃えたくなっても、何百本もあると、Finder(Mac でファイルを見るアプリ)で1本ずつ名前を変えていては終わりません。打ちまちがいも出ます。
一覧表の上なら、同じ分類をまとめて書き込んだり、並べ替えて見比べたりするのが数秒でできます。そして、表のとおりに実物の名前を変える作業は、AI に書いてもらった道具に任せられます。人は「どう直すか」を決めることに集中できるのが、この考え方の利点です。
図の見方:上の段は、何百本ものファイルの名前を、Finder で1本ずつ打ち直した場合です。時間がかかるうえ、打ちまちがいも出ます。下の段は、名前を一覧表に書き出し、表の上でまとめて直してから、表のとおりに実物の名前を一度に変えた場合です。実行する前に「何がどう変わるか」を下見でき、何百本でも短い時間で直せます。
Finder で名前を変えるのは、倉庫に入って箱のラベルを1枚ずつ貼り替える作業です。数本なら問題ありませんが、何百本になると手が追いつきません。そこで、倉庫の中身を台帳(一覧表)に書き写し、台帳の上で作業します。
下の図の左が倉庫(外付けの記憶装置の中にある、実物のファイル)、右が台帳(名前を書き写した一覧表)です。台帳には、今の名前と、付けたい分類(大・中)とタイトルを書き込む欄が1行ずつ並びます。実際に名前を変えるときは、次の図のように「新しい名前」の列を足して使います。
※ ここでいう一覧表は CSV という形式のファイルです。文字だけで書かれた表で、Numbers(Apple の表計算アプリ)や Excel で開いて、ふつうの表として直せます(くわしくは A2)。
流れは3段です。①で、道具が実物の名前を読んで一覧表を作ります。②で、人が表の「新しい名前」の列を書き換えます。③で、道具が表のとおりに実物の名前を変えます。機械がやるのは最初と最後だけで、真ん中の「どう直すか」を決めるのは人です。
このとき、2つの約束を守ります。1つ目は、表の「今の名前」の列は消さないことです。③で道具が倉庫の中の箱を探すときの目印なので、ここまで書き換えると、どの箱の話か分からなくなります。2つ目は、表に載せるのは使う情報だけにすることです。使わない情報まで1本ずつ調べると、その分だけ処理が遅くなります。
筆者の体験メモ
筆者の道具でも、チャットの AI で作っていた頃、①を「一覧を作るプログラム」、③を「表のとおりに名前を変えるプログラム」として、別々に作ってもらいました。名前を変えるプログラムがファイルの大きさまで1本ずつ調べていて遅くなっていたので、途中でその処理を外しました。のちに(エージェント型コーディングに移ってから)、まとめて名前を変える前に対応表を残して元に戻せるようにし、名前が重なったときは上書きせず連番を付ける作りにしています。
台帳と倉庫を分けると、片方だけが変わるという新しい失敗が生まれます。表を書き出したあとに、Finder で実物の名前を変えると、表はもう古い情報です。その表で③を走らせると、目印の名前の箱が倉庫に見つかりません。
これを防ぐいちばん確実な方法は、人が直す場所を1か所にすることです。たとえば道具の画面に「編集」ボタンを付け、そこから直したら、実物の名前と表の行が同時に書き換わるようにすれば、2つがずれる隙がなくなります。
迷ったら「どちらが本物か」を決めておきます。実物が本物で、表はいつでも実物から作り直せる控え、と決めておけば、食い違いに気づいたときは表を作り直すだけで済みます。逆に表を本物にすると、表が壊れたときに実物まで巻き込みます。
筆者の体験メモ
筆者の道具も、最初は図の上のような「表を直してから反映」でしたが、のちに画面の「編集」から直すと、裏側で実物の名前と表の両方をその場で書き換える形に作り替えました(画面からファイルを書き換えるしくみは A3 で説明しています)。
起きていることから探してください。
| 起きていること | 原因 | どうするか |
|---|---|---|
| 反映したら「ファイルが見つかりません」と出る | 表を作ったあとに、実物の名前を別の方法で変えた | 直した表は別の名前で控えて(コピーして)から、表を実物から作り直し、直した内容を写し直します |
| 反映したら、ファイルの数が減っていた | 新しい名前がほかのファイルと重なり、止まらずに上書きされた(名前を変える命令は、同じ名前があっても黙って上書きすることがある) | 反映の前に名前の重なりを調べて止まる、または連番を付けるコードにしてもらいます。上書きされた中身は戻らないので、先に防ぎます |
| 表計算アプリで保存したら、文字が化けた・数字の形が変わった | 表計算アプリが、保存するときに形式を変えることがある | 保存の仕方を AI に確かめます。心配なら、直すのも道具の画面からにします |
| 書き出しや反映に時間がかかる | 使わない情報(ファイルの大きさなど)まで1本ずつ調べている | 本当に使う情報だけを扱うように減らしてもらいます |
| 反映が途中で止まり、どこまで変わったか分からない | 1件ずつ順に変えている途中で、エラー(うまくいかなかったという知らせ)や中断が起きた | 直した表を控えてから、表を実物から作り直して今の状態を見ます。次からは「今 → 新」の対応表を残し、元に戻せるコードにしてもらいます |
※ この道具箱は対話型コーディング(ブラウザの画面でチャットの AI と文章をやりとりして、コードを書いてもらうやり方)の前提です。 チャットの AI はあなたの Mac を見られないので、頼むのは「コードを書いて」、困ったら出た文字を貼って伝えます。 ①〜③を1回ずつ分けて頼むのがコツです。とくに③は実物を変える作業なので、「見せてから実行」の2段階にします。 下の文は、そのまま写すためのものではなく、言い方の見本です。
① 書き出してもらうとき
「このフォルダの動画の名前を、一覧表(CSV)に書き出す Python を書いて。列は『今の名前』と『新しい名前』。新しい名前の列は、今の名前をそのまま入れておいて。ファイルには何もしないコードにして」
③ 反映するコードをもらうとき(下見つき)
「表の『新しい名前』のとおりに名前を変える Python を書いて。まず、変わるものだけを『今 → 新』の形で表示して件数も出し、名前が重なるものや見つからないファイルも知らせる。私が y と打ったときだけ実行し、変える前に「今 → 新」の対応表をファイルに残して、あとで元に戻せる作りにして」
慣れてきたら
「表を手で直すのをやめたい。道具の画面から名前を直したら、実物の名前と一覧表が同時に書き換わるようにして」
※ 「Python」は、AI がよく使うプログラミング言語(Mac への指示を書くための言葉)の名前です。2つ目の「y と打ったときだけ実行」のように実行の前に止まる作りにしておくと、まちがった表で一度に全部変えてしまう事故を防げます。対応表を残しておけば、変えたあとでも元の名前に戻せます。
表と実物が食い違っていないかは、3つの時点でファイルの数をくらべると確かめられます。
書き出したあとに、表の行数と、フォルダの中のファイルの数が同じかを見ます。Finder でフォルダを開くと、窓の下の端に「○項目」と数が出ます(出ていなければ、メニューの「表示」→「ステータスバーを表示」を選びます)。
反映する前に、下見の「今 → 新」の件数が、自分が表で直したつもりの数と同じかを見ます。多すぎる・少なすぎるなら、表のどこかが思ったのと違っています。
反映したあとに、直した表を控えてから表を実物からもう一度作り直し、直した名前になっているか、ファイルの数が減っていないかを見ます。数が減っていたら、すぐに手を止めて AI に相談します。