LAB 002 — GUIDE
AI にコードを書かせていると、いつか必ず「さっきまで動いていたのに」が来ます。 そのとき戻れるかどうかは、壊れる前に決まっています。 GitHub はまだ使いません。自分の Mac 1台の中だけで、戻れる状態を作ります。
約40分
全部やる場合
6 STEP
手順の数
Mac 1台
2台目は次回
0円
追加の費用
※ LAB 001(Claude Code と Obsidian をつなぐ) を終えている前提で書いています。ターミナルの開き方などはそちらに戻ってください。
INTRO
前回、AI の作業場のとなりに Obsidian を置いて、なぜそう直したかがノートに残るようにしました。 ただ、ノートに残るのは言葉です。 壊れたときに必要なのは「あのとき動いていた中身そのもの」で、これは言葉では戻せません。
残し方には3つあって、それぞれ守っているものが違います。今回作るのは右端です。
図の見方:会話は流れて消え、ノートは言葉を残し、git は中身そのものを点として残します。
「バージョン管理はプロが使うもの」と思われがちですが、 AI に書かせる人こそ必要です。理由は性格の違いです。
一度のお願いで10個以上のファイルが変わることがあります。どこが効いたのか、後から目で追えません。
確かめる前に次の変更が乗ります。「どこまでは動いていたか」の境目が、すぐ分からなくなります。
これが決定的です。自分の手で書いていないものは、記憶から復元できません。頼れるのは記録だけです。
WORDS
フォルダの中身をまるごとコピーして積み上げていく道具です。 Mac には最初から入っています。難しく言えば「バージョン管理システム」ですが、 この記事ではセーブポイントを作る道具としてだけ使います。
そのセーブポイント1つのことです。「いまの状態を1枚コピーしておく」=「コミットする」。 ゲームのセーブと違うのは、上書きではなく積み上がるところで、 何個前にでも戻れます。
セーブポイントを積んでいく対象のフォルダのことです。 「このフォルダを git で見張る」と宣言すると、そのフォルダがリポジトリになります。 GitHub とは別物です(GitHub は次回)。
この記事では GitHub を使いません。 git は自分の Mac の中だけで完結する道具で、インターネットも、アカウントも、公開も要りません。 「他人に見られるのでは」という心配は、この記事の範囲では起きません。
STEP 1 — 目安 5分
前回作ったのは「ノートの置き場所」でした。今回はその手前に、
AI に作らせたものが溜まっていく場所を1つ決めます。
あちこちに散らばっていると、守りようがないからです。
名前は何でも構いませんが、この記事では ~/code とします
(~ は自分のユーザーフォルダの意味です)。
ノートは git に入れません。 ノートは「今の最新版が読めればいい」もので、1行ごとの変更履歴は要りません。 逆にコードは「動いていた時点に戻れる」ことが命なので、扱いを分けます。 ——この2系統に分かれているという感覚が、次回の「2台のMac」でそのまま効いてきます。
✓ ここまでの確認:
Finder に code という名前のフォルダが1つあり、
AI に作らせるものは今後そこに置く、と決まっている。まだ中身は空でも構いません。
STEP 2 — 目安 10分
git --version
git version 2.50.1 のように出れば入っています。
入っていない場合は「開発者ツールをインストールしますか」というダイアログが自動で出るので、
そのまま進めてください(数分かかります)。自分で探して入れる必要はありません。
git はセーブポイントに「誰がコピーしたか」を書き込みます。最初の1回だけ設定が要ります。 この記事の範囲では外に出ないので、本名でなくて構いません。
git config --global user.name "あなたの名前"
git config --global user.email "あなたのメール"
git config --global init.defaultBranch main
3行目は「最初の枝の名前を main にする」という設定です。
無くても動きますが、毎回おせっかいな警告が出るので消しておきます。
ターミナルで cd と半角スペースを打ってから、
STEP 1 のフォルダをドラッグ&ドロップして Enter。そのあと1行です。
git init
Initialized empty Git repository と出れば成功です。
フォルダの中に .git という隠しフォルダができ、ここに歴史が積まれていきます。
見た目は何も変わりません。この時点ではまだ1枚もコピーしていません。
ここが最初の山場です。git には3つの置き場所があり、 これさえ分かれば残りは手順です。
いまの状態はこれで見られます。この先も、迷ったらまずこれを打ちます。
git status
✓ ここまでの確認:
git status が英語の一覧を返す。
「まだ何もコピーしていません」「こんなファイルがあります」と言われている状態なら正常です。
STEP 3 — 目安 10分 / この記事の山場
この STEP を、最初のコミットより先に置いているのには理由があります。 git は一度コピーしたものを消しません。それが長所であり、ここでは落とし穴になります。 パスワードの入ったファイルを1回でもコピーしてしまうと、あとでファイルを消しても 過去のセーブポイントの中には残り続けます。 つまり「あとで気をつける」が効かない場所です。
やることは .gitignore(ギットイグノア)という名前のファイルを1つ作るだけです。
ここに書いた名前のものは、git が最初から見えていないものとして扱います。
AI に頼むのがいちばん早いです。会話画面にそのまま貼れます。
このフォルダに .gitignore を作って。
合言葉・個人のデータ・この Mac だけの設定・作り直せるもの を
git に入れない形にして、それぞれ何を除いたか理由もコメントで書いて。
出来上がりはこんな形です。1行に1つ、# で始まる行はコメントです。
# ===== ① 合言葉(絶対に入れない) =====
.env
*.key
*.pem
# ===== ② 個人のデータ(外に出したくない中身) =====
data.json
# ===== ③ この Mac だけの設定(混ざると事故る) =====
settings.local.json
# ===== ④ 作り直せるもの(歴史に残す意味がない) =====
__pycache__/
node_modules/
*.log
.DS_Store
理由をコメントで書き残してください。 半年後の自分は「なぜこれを外したんだっけ」を必ず忘れます。理由が無いと、 後から良かれと思って外し直してしまうのが一番危ないパターンです。 1行で構いません。
git status
一覧から、除いたはずのファイルが消えていれば成功です。
まだ見えているなら、名前が違うか、そのファイルが .gitignore より前に
1度でもコピーされています(後者の直し方は「もう上げてしまっていたら」へ)。
✓ ここまでの確認:
git status の一覧に、見られたくないファイルが1つも出てこない。
ここを通過してから、次で初めてコピーします。
STEP 4 — 目安 5分
いよいよ1枚コピーします。選んでからコピーする、の2手です。
git add .gitignore app.py index.html ← コピーしたいものを名前で並べる
git commit -m "最初の記録:アプリの土台ができたところ"
-m のあとがそのセーブポイントの名前です。
日本語で構いません。「何をしたか」だけでなく「なぜそうしたか」を一言足しておくと、
戻り先を探すときに効きます。
積み上がった分は、いつでも一覧で見られます。
git log --oneline
左に出ている a1b2c3d のような文字列が、その1枚の背番号です。
戻すときに使います。q キーで一覧を閉じられます。
✓ ここまでの確認:
git log --oneline に、自分が付けた名前の行が1つ以上出る。
この時点で「戻れる」状態は完成しています。
残りは、続ける仕掛け(STEP 5)と、実際の戻し方(STEP 6)です。
STEP 5 — 目安 5分
ここまでの手順は、人が毎回打つには多すぎます。前回 CLAUDE.md に
「直したらノートに書く」と書いたのと同じ要領で、コピーするのも AI の仕事にします。
ただし、任せ方に1つだけ決まりを作ります。
git には「変わったもの全部を一気に選ぶ」便利な書き方があります(git add -A)。
AI は放っておくとこれを使います。速いからです。ですが、これを許すと
門が1枚しかない状態になります。
.gitignore は自分が思いついたものしか弾けません。
AI は作業の途中で、こちらが知らないファイルを勝手に作ります。
その「思いついていなかったもの」を止められるのは、名前を並べて選ぶという手間だけです。
面倒に見えますが、ここが最後の砦です。
前回作った CLAUDE.md に、この節を足します。そのまま使えます。
## 記録の残し方
- 何か直して、動くのを確かめたら、そこで1枚コミットする
- コミットの名前は日本語で。何をしたか+なぜそうしたかを1行で
- **`git add -A` と `git add .` は使わない。**
触ったファイルを名前で指定する。迷ったら `git status` を読んでから
- 合言葉や個人のデータらしきファイルを見つけたら、
コミットせずに先に報告する
✓ ここまでの確認:
何か小さな修正を頼んで、こちらが言わなくてもコミットされ、
git log --oneline に日本語の行が増えている。
STEP 6 — 目安 5分
ここまでが「保険をかける」話で、ここからが「使う」話です。 戻し方はどこまで戻したいかで3つに分かれます。
| こうなったら | 打つもの |
|---|---|
| AI が触った直後に動かなくなった(まだコピーしていない) | git restore ファイル名 |
| 1つのファイルだけ、前の版に戻したい | git restore --source=背番号 ファイル名 |
| コピーしてしまった1枚を無かったことにしたい | git revert 背番号 |
いちばん実用的なのは、AI に頼むことです。 Claude Code は git を扱えるので、慌てているときはこう言えば足ります。 背番号を調べるのも AI にやらせられます。
さっきの変更で動かなくなった。
直前のコミットの状態に戻して。何を戻すか先に見せて。
git reset --hard だけは自分で打たないでください。
検索するとよく出てきますが、コピーしていない変更を問答無用で消します。
上の3つで足りますし、足りないときは AI に「取り返しのつく方法で」と添えて頼む方が安全です。
LEAK
.gitignore を作る前に何枚かコピーしていた、という順番になることはよくあります。
落ち着いて手当てすれば大丈夫ですが、「ファイルを消せば終わり」ではないという一点だけ、
先に頭に入れてください。
git rm --cached 秘密のファイル名
--cached が付いているのでファイル自体は消えません。
「git の管理から外す」だけです。
.gitignore に足して、もう一度コピーするこれで今後は入らなくなります。ここまでは、どちらも「これから」の話です。
過去のセーブポイントの中に値が残っている以上、その値はもう「見られた前提」で扱うのが正解です。 サービス側で新しいパスワードや鍵に取り替えてしまえば、残っている古い値はただの文字列になります。 歴史から消そうとするより、値を無効にする方が早くて確実です。
歴史そのものから消す方法もありますが、過去のセーブポイントを全部書き換える破壊的な作業で、 1台で使っている今の段階では割に合いません。 先に③を済ませてください。それさえ済んでいれば、残っていても実害はありません。 ——そして次回 GitHub に上げる前に、この片付けを終えておく必要があります。 自分の Mac の中で済んでいるうちは、まだ引き返せます。
TROUBLE
| 起きていること | 原因 | どうするか |
|---|---|---|
Please tell me who you are |
名前とメールをまだ登録していない | STEP 2-2 の2行を実行する |
fatal: not a git repository |
対象のフォルダの外で打っている | cd でフォルダへ移動してから打ち直す |
.gitignore に書いたのに一覧から消えない |
それより前に1度コピーされている | git rm --cached で追い出す(漏れの手当てへ) |
git log から抜けられない |
一覧を見るモードに入っている | q キーを1回押す |
違う場所で git init してしまった |
ホームフォルダなどで打った | そのフォルダの .git を消せば元通り(他のファイルは無事) |
AI が勝手に git add -A を使う |
速い書き方を知っているため | CLAUDE.md に禁止と理由を書く(STEP 5-2) |
| コミットが増えすぎて戻り先が探せない | 名前が「修正」「更新」ばかりになっている | 名前に「なぜ」を入れる。探すのは AI に頼む |
| フォルダが妙に重くなった | 動画・画像・書き出したデータをコピーしている | 「作り直せるもの」は .gitignore へ回す |
FAQ
あります。むしろ1台のときこそ本体です。git の中心は「戻せること」で、複数の機械で同期するのは後から付いてくる使い道にすぎません。この記事の範囲だけでも十分に元が取れます。
コードや文章のようなテキストなら、ほとんど増えません。変わった部分だけを記録する仕組みだからです。太るのは画像・動画・書き出したデータをコピーしたときなので、それらは「作り直せるもの」として除いておきます。
この段階では不要です。ノートは「最新が読めればいい」もので、1行ごとの履歴を追う場面がほとんどありません。それに Obsidian 自体にファイル復元の機能があります。コードと系統を分けておく方が、次回の同期の話がすっきりします。
打ち消すことはできますが、歴史からは消えません。それが git の性質です。だから合言葉の類は「消す」ではなく「値を変える」で対処します(漏れの手当て)。
なりません。いま作った歴史は同じ Mac の中にあるので、Mac ごと壊れれば一緒に消えます。守れるのは「自分(と AI)が壊したとき」だけです。機械の故障に備える話は次回です。
NEXT
まずは1週間、何か直して動いたら1枚コピーするだけを続けてみてください。 戻したい場面は、思っているより早く来ます。そこで一度でも戻せたら、この仕組みは身に付きます。
LAB 003(準備中)
2台の Mac と iPhone で、同じものを持ち歩く
GitHub を足して、2台目の Mac から続きができるようにします。 この記事の冒頭に出した3つの残り方——会話・ノート・コード——が、 そこで「どれが自動で届き、どれが届かないか」に分かれます。 いちばん困るのは、届かないものに気づかないまま移動したときです。
※ コマンドや画面の名称は、更新で変わることがあります。この記事は筆者が自分の Mac で実際に使っている手順をもとにしていますが、動作を保証するものではありません。 大事なデータを扱う前に、練習用のフォルダで一度試すことをおすすめします。