はじめての道具箱 — まず知っておくこと
— AI にファイルの「住所」を伝える —
Mac の中のファイルには、一つひとつ「住所」があります。 この記事では、その住所の読み方と、まちがえずに AI へ伝える方法を、はじめての人向けに説明します。
この記事を読むとできること
想定している使い方
ブラウザで開くチャット型の AI(Gemini や ChatGPT など)にコードを書いてもらい、 それを自分の Mac に保存して動かす使い方です。この記事の操作や画面の説明は、すべて Mac を前提にしています。
読む目安:約13分 ・ 道具箱の項目 A1(まず知っておくこと)・ 図4枚
ファイルは中身の入った1枚の書類、フォルダは書類を入れる入れ物です。 そしてパスは、「どの入れ物をどの順にたどれば、その書類に着くか」を書いた住所です。
チャットの AI は、あなたの Mac の中を見ることができません。 そのため、たとえば「書類フォルダの中身を一覧にするコードを書いて」と頼んでも、 AI はそのフォルダが実際にどこにあるのかを知りません。
AI が書くコード(Mac への指示を書いた文章)には、扱うファイルの住所を正確に書き込む必要があります。 住所がまちがっていると、コードを動かしたときに「ファイルが見つかりません」という知らせが出て止まります。 だからこそ、パスを読めて、正確に AI へ伝えられることが、AI と道具を作るときの最初の一歩になります。
図の見方:上の段は、住所を渡さずに「いつもの書類フォルダ」と頼んだ場合です。チャットの AI はあなたの Mac の中を見られないので、 場所を推測してコードを書くしかなく、動かすと「見つかりません」と止まります。下の段は、Finder(Mac でファイルを見るアプリ)で写したパス(住所のメモ)を添えて頼んだ場合で、 AI はその住所をそのままコードに書き込むので、正しいフォルダに届きます。
Mac でファイルを見るときに使うアプリを Finder(ファインダー)と呼びます。画面の下に並ぶアイコンのうち、青と白の顔のマークのものです。 Finder でファイルを探すときは、フォルダを外側から1つずつ開いて奥へ進みます。
たとえば「Users」フォルダを開き、その中の「hanako」フォルダを開き、さらに「書類」フォルダを開くと「メモ.txt」が見つかる、とします。 この開いた順番を「/」(スラッシュ)でつないで1行にしたものがパスで、 /Users/hanako/Documents/メモ.txt と書きます。「/」は「その中の」という意味です。
※ hanako は説明用の名前です。実際には、あなたの Mac のユーザー名が入ります。 また、Finder で「書類」と表示されるフォルダは、パスの中では英語の「Documents」と書かれます(画面の表示だけが日本語になっています)。
ファイル名の「.」(ピリオド)から後ろの部分を拡張子と呼びます。 .txt は文字だけの書類、.mp4 は動画、.csv は表、.html は Web ページ、というように中身の種類を表していて、 Mac はこの札を見て、どのアプリで開くかを決めています。拡張子もパスの一部なので、省略せずに伝えます。
パスを手で打つと、1文字まちがえただけで届かなくなります。 Mac には、パスを正確に写し取る方法が用意されているので、それを使います。
「~」(チルダ)は自分のフォルダの省略
~/Documents と書かれていたら、/Users/(自分の名前)/Documents のことです。 AI の返事によく出てきます。
外付けドライブの住所
外付けの HDD(ハードディスク)などは /Volumes/(ドライブの名前)/… という住所になります。 ドライブの名前が住所の一部になる点に注意します。
パスは道順なので、途中のフォルダの名前を変えたり、フォルダを別の場所へ動かしたりすると、 中のファイルは無事でも、古いパスではたどり着けなくなります。
とくに気をつけたいのが外付けドライブの名前です。コードの中にドライブの名前ごとパスを書き込んでおくと、 ドライブの名前を変えた日から、そのコードは何も見つけられなくなります。 下の図は、ドライブの名前を変える前と後で、パスがどう変わるかを示したものです。
※ 名前の決め打ちを避けるには、AI にコードを頼むときに「ドライブの名前を直接書き込まないで」と伝えます(このあとの「AI への伝え方」を参照)。
筆者の体験メモ
筆者が作った道具も、チャットの AI に書いてもらったコードに、外付け HDD の名前を含むパスがそのまま書き込まれていました。 その後、外付け HDD の名前を変えたところ、ファイルは1つも消えていないのに、道具の一覧が空っぽになりました。 いまは名前を決め打ちせず、つながっているドライブをその都度探す作りに直してあります。
起きていることから探してください。
| 起きていること | 原因 | どうするか |
|---|---|---|
| 「No such file or directory」(そのようなファイルやフォルダはありません)と出る | パスの打ちまちがい、または途中の名前が変わった・フォルダを動かした | 手で打たず、写し取ったパスを伝え直します |
| 名前に空白(スペース)が入ったフォルダだけ、うまく扱えない | ターミナルでは空白が区切りと読まれ、パスが途中で切れてしまう | ドラッグで入れます。空白の前に「\」が自動で付き、正しく1つのパスとして読まれます |
| 外付けドライブの名前を変えたら、道具の一覧が空になった | コードがドライブの名前をパスに直接書き込んでいた | 名前を決め打ちせず、つながっているドライブを探す作りにしてもらいます |
| 別の Mac で同じコードを動かすと、ファイルが見つからない | ユーザー名が違うと、Users の次の部分が変わる | 「~」(自分のフォルダ)を使った書き方にしてもらいます |
| iCloud Drive(Apple のインターネット上の保管場所とつながったフォルダ)のファイルのパスが長くて、どこか分からない | iCloud Drive の中身は、ふだんは隠れている「Library(ライブラリ)」というフォルダの奥にある | 探さずに、右クリック+option の「パス名をコピー」で写します |
※ この道具箱は対話型コーディング(ブラウザの画面でチャットの AI と文章をやりとりして、コードを書いてもらうやり方)の前提です。 チャットの AI はあなたの Mac を見られないので、頼むのは「コードを書いて」、困ったら出た文字を貼って伝えます。 「いつもの書類フォルダ」と書いても、AI にはどこのことか分かりません。 写し取ったパスを1つ添えるだけで、そのまま動くコードが返ってきやすくなります。 下の文は、そのまま写すためのものではなく、言い方の見本です。
フォルダを指してコードを頼むとき
「(写し取ったパスを貼る)このフォルダにあるファイルの名前を一覧にする Python を書いて。ファイルの中身や名前は変えないコードにして」
道具を作ってもらうとき
「外付けドライブの名前や、私のユーザー名をそのまま書き込まないで。名前が変わっても動くようにして。 見つからなかったときは、どこを探したかを画面に出すコードにして」
※ 1つ目の「Python」は、AI がよく使うプログラミング言語(Mac への指示を書くための言葉)の名前です。 2つ目の最後の一文があると、見つからないときに黙って空っぽになるのではなく、どこで迷ったかが画面で分かります。
パスが読めるようになったかは、同じファイルを別々の方法で写して、同じ住所になるかで確かめられます。
好きなファイルを1つ選び、右クリックしてから option キーを押し、「パス名をコピー」で写して、メモに貼ります。
同じファイルをターミナルの画面へドラッグして、出てきた文字と見くらべます。 空白の前に付く「\」を除けば、同じ文字が並ぶはずです。
Finder のパスバーに並んだフォルダの順番が、パスの区切りの順番と同じかを見ます。 3つが一致すれば、パスは読めるようになっています。