FRL 自由研究ラボ

はじめての道具箱 — まず知っておくこと

ファイル・フォルダ・パス

— AI にファイルの「住所」を伝える —

Mac の中のファイルには、一つひとつ「住所」があります。 この記事では、その住所の読み方と、まちがえずに AI へ伝える方法を、はじめての人向けに説明します。

この記事を読むとできること

  • 「パス」と呼ばれるファイルの住所が読めるようになります
  • パスを打ちまちがえずに写し取れるようになります
  • AI にコードを頼むとき、場所を正確に伝えられるようになります

想定している使い方

ブラウザで開くチャット型の AI(Gemini や ChatGPT など)にコードを書いてもらい、 それを自分の Mac に保存して動かす使い方です。この記事の操作や画面の説明は、すべて Mac を前提にしています。

  1. パスとは何か
  2. パスの読み方
  3. パスの写し方
  4. 名前が変わると届かない
  5. よくあるつまずき
  6. AI への伝え方
  7. 確かめ方
  8. 関連する項目

読む目安:約13分 ・ 道具箱の項目 A1(まず知っておくこと)・ 図4枚

パスとは何か ―― なぜ AI に伝える必要があるのか

ファイルは中身の入った1枚の書類、フォルダは書類を入れる入れ物です。 そしてパスは、「どの入れ物をどの順にたどれば、その書類に着くか」を書いた住所です。

チャットの AI は、あなたの Mac の中を見ることができません。 そのため、たとえば「書類フォルダの中身を一覧にするコードを書いて」と頼んでも、 AI はそのフォルダが実際にどこにあるのかを知りません。

AI が書くコード(Mac への指示を書いた文章)には、扱うファイルの住所を正確に書き込む必要があります。 住所がまちがっていると、コードを動かしたときに「ファイルが見つかりません」という知らせが出て止まります。 だからこそ、パスを読めて、正確に AI へ伝えられることが、AI と道具を作るときの最初の一歩になります。

✕ 住所を渡さずに頼むと あなたの Mac 中が見えるのは あなただけ 「いつもの書類フォルダの 中身を読んで」 チャットの AI どこのこと? Mac の中は見えない 当てずっぽうの 住所で書く →「見つかりません」 ○ パス(住所)を渡して頼むと あなたの Mac Finder で パスを写す 住所のメモ(パス) /Users/hanako/Documents を添えて頼む チャットの AI 場所が分かった 住所をコードに書く 正しい住所入りの コードが返り、 そのまま動く AI は Mac の中を見られません。パスは、AI に場所を教えるための「住所のメモ」です。

図の見方:上の段は、住所を渡さずに「いつもの書類フォルダ」と頼んだ場合です。チャットの AI はあなたの Mac の中を見られないので、 場所を推測してコードを書くしかなく、動かすと「見つかりません」と止まります。下の段は、Finder(Mac でファイルを見るアプリ)で写したパス(住所のメモ)を添えて頼んだ場合で、 AI はその住所をそのままコードに書き込むので、正しいフォルダに届きます。

パスの読み方 ―― フォルダをたどる道順を1行で書いたもの

Mac でファイルを見るときに使うアプリを Finder(ファインダー)と呼びます。画面の下に並ぶアイコンのうち、青と白の顔のマークのものです。 Finder でファイルを探すときは、フォルダを外側から1つずつ開いて奥へ進みます。

たとえば「Users」フォルダを開き、その中の「hanako」フォルダを開き、さらに「書類」フォルダを開くと「メモ.txt」が見つかる、とします。 この開いた順番を「/」(スラッシュ)でつないで1行にしたものがパスで、 /Users/hanako/Documents/メモ.txt と書きます。「/」は「その中の」という意味です。

Finder で開いていく順番 Mac の中(いちばん外) Users Users の中 hanako hanako の中 書類 書類 の中 メモ.txt 着いた 同じ道順を1行で書くと(=パス) / Users / hanako / Documents / メモ.txt 「/」が「その中の」という意味

※ hanako は説明用の名前です。実際には、あなたの Mac のユーザー名が入ります。 また、Finder で「書類」と表示されるフォルダは、パスの中では英語の「Documents」と書かれます(画面の表示だけが日本語になっています)。

名前の最後の「.txt」は、中身の種類を表す札です

ファイル名の「.」(ピリオド)から後ろの部分を拡張子と呼びます。 .txt は文字だけの書類、.mp4 は動画、.csv は表、.html は Web ページ、というように中身の種類を表していて、 Mac はこの札を見て、どのアプリで開くかを決めています。拡張子もパスの一部なので、省略せずに伝えます。

パスの写し方 ―― 手で打たず、Mac に写してもらう

パスを手で打つと、1文字まちがえただけで届かなくなります。 Mac には、パスを正確に写し取る方法が用意されているので、それを使います。

3つの写し方

  1. コピーする:Finder でファイルを右クリックし、メニューが出たら option キーを押します。 メニューの中に「“メモ.txt”のパス名をコピー」が現れるので、それを選びます。 あとは AI への入力欄で ⌘(command)キーと V を同時に押せば、パスが貼り付けられます。
  2. ドラッグする:ファイルをマウスでつかんで、ターミナル (文字で命令を打ち込むためのアプリ。「アプリケーション」→「ユーティリティ」の中にあります)の画面に落とすと、 そのファイルのパスが文字になって入ります。
  3. 表示する:Finder の上のメニューで「表示」→「パスバーを表示」を選ぶと、 Finder の窓の下の端に、いま開いている場所までの道順が並んで表示されます。
① 写す ファイルを右クリック option キーを押すと 「パス名をコピー」が出る AI への頼みごとに貼る ② 落とす ファイルをつかんで ターミナルの画面へ ドラッグする パスの文字に変わって入る ③ 見る Finder のメニュー 「表示」→「パスバーを表示」 下の端に道順が並ぶ いまどこにいるかが分かる どれも、パスを1文字も打たずに済む方法です

よく見かける2つの書き方

「~」(チルダ)は自分のフォルダの省略

~/Documents と書かれていたら、/Users/(自分の名前)/Documents のことです。 AI の返事によく出てきます。

外付けドライブの住所

外付けの HDD(ハードディスク)などは /Volumes/(ドライブの名前)/… という住所になります。 ドライブの名前が住所の一部になる点に注意します。

途中の名前が変わると、住所ごと変わります

パスは道順なので、途中のフォルダの名前を変えたり、フォルダを別の場所へ動かしたりすると、 中のファイルは無事でも、古いパスではたどり着けなくなります。

とくに気をつけたいのが外付けドライブの名前です。コードの中にドライブの名前ごとパスを書き込んでおくと、 ドライブの名前を変えた日から、そのコードは何も見つけられなくなります。 下の図は、ドライブの名前を変える前と後で、パスがどう変わるかを示したものです。

道具が覚えていたパス /Volumes/ 外付けHDD /メモ.txt ドライブの名前を変えたあとの、本当のパス /Volumes/ 仕事用HDD /メモ.txt → ファイルは1つも消えていないのに、道具の一覧は空っぽになる (ドライブ名・ファイル名は説明用の例です)

※ 名前の決め打ちを避けるには、AI にコードを頼むときに「ドライブの名前を直接書き込まないで」と伝えます(このあとの「AI への伝え方」を参照)。

筆者の体験メモ

筆者が作った道具も、チャットの AI に書いてもらったコードに、外付け HDD の名前を含むパスがそのまま書き込まれていました。 その後、外付け HDD の名前を変えたところ、ファイルは1つも消えていないのに、道具の一覧が空っぽになりました。 いまは名前を決め打ちせず、つながっているドライブをその都度探す作りに直してあります。

よくあるつまずき

起きていることから探してください。

起きていること 原因 どうするか
「No such file or directory」(そのようなファイルやフォルダはありません)と出る パスの打ちまちがい、または途中の名前が変わった・フォルダを動かした 手で打たず、写し取ったパスを伝え直します
名前に空白(スペース)が入ったフォルダだけ、うまく扱えない ターミナルでは空白が区切りと読まれ、パスが途中で切れてしまう ドラッグで入れます。空白の前に「\」が自動で付き、正しく1つのパスとして読まれます
外付けドライブの名前を変えたら、道具の一覧が空になった コードがドライブの名前をパスに直接書き込んでいた 名前を決め打ちせず、つながっているドライブを探す作りにしてもらいます
別の Mac で同じコードを動かすと、ファイルが見つからない ユーザー名が違うと、Users の次の部分が変わる 「~」(自分のフォルダ)を使った書き方にしてもらいます
iCloud Drive(Apple のインターネット上の保管場所とつながったフォルダ)のファイルのパスが長くて、どこか分からない iCloud Drive の中身は、ふだんは隠れている「Library(ライブラリ)」というフォルダの奥にある 探さずに、右クリック+option の「パス名をコピー」で写します

AI への伝え方

※ この道具箱は対話型コーディング(ブラウザの画面でチャットの AI と文章をやりとりして、コードを書いてもらうやり方)の前提です。 チャットの AI はあなたの Mac を見られないので、頼むのは「コードを書いて」、困ったら出た文字を貼って伝えます。 「いつもの書類フォルダ」と書いても、AI にはどこのことか分かりません。 写し取ったパスを1つ添えるだけで、そのまま動くコードが返ってきやすくなります。 下の文は、そのまま写すためのものではなく、言い方の見本です。

フォルダを指してコードを頼むとき

「(写し取ったパスを貼る)このフォルダにあるファイルの名前を一覧にする Python を書いて。ファイルの中身や名前は変えないコードにして」

道具を作ってもらうとき

「外付けドライブの名前や、私のユーザー名をそのまま書き込まないで。名前が変わっても動くようにして。 見つからなかったときは、どこを探したかを画面に出すコードにして」

※ 1つ目の「Python」は、AI がよく使うプログラミング言語(Mac への指示を書くための言葉)の名前です。 2つ目の最後の一文があると、見つからないときに黙って空っぽになるのではなく、どこで迷ったかが画面で分かります。

確かめ方 ―― 同じファイルを3つの方法で見る

パスが読めるようになったかは、同じファイルを別々の方法で写して、同じ住所になるかで確かめられます。

  1. 1

    好きなファイルを1つ選び、右クリックしてから option キーを押し、「パス名をコピー」で写して、メモに貼ります。

  2. 2

    同じファイルをターミナルの画面へドラッグして、出てきた文字と見くらべます。 空白の前に付く「\」を除けば、同じ文字が並ぶはずです。

  3. 3

    Finder のパスバーに並んだフォルダの順番が、パスの区切りの順番と同じかを見ます。 3つが一致すれば、パスは読めるようになっています。