FRL 自由研究ラボ

AIエージェントことはじめ — LAB 001 はじめに読む

コーディングとは何か

— 指示書を出して、返事を見て直す —

コーディングとは、コンピュータへの指示書(コード)を出し、エラーという返事を見て直す、そのくり返しのことです。 正しいコードを一度で書き上げることではありません。 昔はこの指示書を「書く」のがいちばん大変でしたが、いまは AI が代わりに書いてくれます。 だから、はじめての人でも今日から始められます。

この記事を読むとできること

  • コーディングが「書くこと」ではなく「回すこと」だと分かります
  • AI に書かせる2つのやり方(AI に書いてもらって自分で運ぶ「対話型コーディング」と、AI に丸ごと任せる「エージェント型コーディング」)の違いが分かります
  • どちらから始めればよいか、始める前の注意点が分かります

想定している使い方

読むことが中心で、最後に、無料のチャットの AI で短いコードを1つ試す「次の一歩」を紹介します。 説明はすべて Mac を前提にしています。

この記事の道順

  1. part 1 ― なぜ今、初心者にもできるのか
  2. part 2 ― AI に書かせる2つのやり方
  3. part 3 ― 具体例で見る(写真を半分の大きさにする)
  4. part 4 ― どちらから始めるか
  5. part 5 ― 始める前に知っておきたい注意点
  6. 次の一歩

読む目安:約12分 ・ 本文に手を動かす作業はありません(最後に、試せる一歩を1つ紹介します) ・ 図6枚

part 1 ― なぜ今、初心者にもできるのか

コードは「コンピュータへの指示書」

人に「写真を小さくしておいて」と頼めば、相手は察して動いてくれます。コンピュータは察しません。 どのフォルダの、どの写真を、どれくらい小さくして、どこに置くのか——抜けがあると止まります。 その抜けのない頼み方を書いたものがコードで、いわばコンピュータへの指示書です。

人の言葉 「写真を小さく しておいて」 察してもらう前提 抜けがあっても通じる コード for name in os.listdir("写真"): img = Image.open(name) small = img.resize(...) small.save(name) どこの・どれを・どうするか 人にもコンピュータにも読める コンピュータ 01001100 01101001 01110100 01110100 01101100 01100101 察しない 抜けがあれば止まる AI がやってくれるのは、左から真ん中への翻訳です。右側はコンピュータが勝手にやります。

※ 図の真ん中のコードは、雰囲気をつかむための例です。読めなくて構いません。

エラーは、失敗ではなく「コンピュータからの返事」

書いた指示書は、最初から思いどおりに動くとは限りません。動かすと、うまくいかなかったところで英語の知らせが出ます。これがエラーです。 赤い文字が出ると「自分には向いていない」と思いがちですが、エラーは失敗ではなく、 「ここが足りません」と教えてくれるコンピュータからの返事です。

ですから、コーディングは「書いたら完成」の一直線ではありません。書く → 動かす → 返事を読む → 直すをくり返して、だんだん思いどおりの形に近づけていきます。このくり返しを、この先は「ループ」と呼びます。

想像されているコーディング 書く できあがり ← 一直線。実際にはこうならない 実際のコーディング ① 書く ② 動かす ③ 結果を読む ④ 直す エラーが出る = ふつうのこと 何度も回る 時間の使われ方 書く 動かす・読む・直す このループを誰が回すのか——それが、次に出てくる「2つのやり方」の違いそのものです。

「書く」は AI が代わりにやってくれる

昔は、このループのうち「書く」がいちばん大変でした。指示書の書き方(プログラミング言語の文法)を覚えるところから始める必要があったからです。 いまは、その「書く」を AI が肩代わりしてくれます。

書く作業を AI が引き受けてくれるので、人の役目の中心は2つになります。「何に困っているかを伝えること」と、「できたものが正しく動いているか確かめること」です。 どちらも、あなたが仕事や暮らしの中で知っていることがそのまま活きる役目です(ほかにどこまで手を動かすかは、part 2 で見る2つのやり方で変わります)。

✕ コーディング = コードを書くこと、と思うと 「コードを書けないと できない」 文法から勉強しようとする 何を作るかは後回し 「自分には無理」で 始められない ○ 書くのは AI、あなたは「決めて、確かめる」と思うと 何を作るか決める あなたの実務経験 AI がコードを書く 書く・動かす・直すを回す できたものを確かめ、 今日から始められる コードを書く力より、「何を作るか」と「できたものが使えるか」を判断する力の方が、あなたの持ち場です。

図の見方:上の段は、コーディングを「コードを書くこと」だと考えた場合です。書けない自分には無理だと思い、文法の勉強から入ろうとして、始める前に止まってしまいます。 下の段は、書く作業は AI に任せ、あなたは「何を作るか決める」「できたものを確かめる」役を持つと考えた場合です。これなら今日から始められます。

part 2 ― AI に書かせる2つのやり方

「AI にコードを書かせる」と一口に言いますが、やり方は2つあります。順番に見ていきます。

対話型コーディング ―― AI に書いてもらい、自分がコピペで運ぶ

ブラウザの画面で、ChatGPT や Gemini のようなチャットの AI に「こんなことをするコードを書いて」と頼むやり方です。 AI が返してくれるのはコードの文字だけで、あなたの Mac には触れません。

そこから先は、あなたの手作業です。コードをコピーしてファイルに貼り、保存し、ターミナル(文字で命令を打ち込むアプリ。Mac に最初から入っています)で動かします。 エラーが出たら、その文字をコピーしてまた AI に貼ります。ループを回すあいだ、コードとエラーを運ぶのはあなたです。

AI(ブラウザの中) 書く …だけ 動かしていないので 動いたか知らない あなた ・コードをコピーする ・ファイルに貼って保存する ・ターミナルで動かす ・エラーをコピーする ・AI に貼って聞き直す ・もう一度ぜんぶやる = ループを回すのは人 あなたの Mac ファイル・実行 AI からは見えない コード 貼る エラー 聞き直す 1回で済むことはまずありません。エラーが出るたび、この往復がもう1周増えます。 ただし、往復のすべてが目の前で起きるので「何が起きているか」は全部見えます。

エージェント型コーディング ―― AI に丸ごと任せて、AI 自身が回す

AI があなたの Mac を直接操作するやり方です。この形の AI を「AI エージェント」と呼びます。 AI が自分でファイルを読み書きし、動かし、エラーを読んで、自分で直します。

あなたがやるのは、何を作るかを決めること、AI が「この操作をしてよいか」と聞いてきたら許可を出すこと、できたかを確かめることの3つです。 ループは AI の中で回ります。

あなた ・何を作るか決める ・許可を出す ・できたか確かめる 3つだけ 頼む 報告 AI エージェント ① 書く ② 動かす ③ 結果を読む ④ 直す 人を通さずに回る あなたの Mac ファイル・実行 AI から見える コピー&ペーストが1回も出てきません。あなたが運ぶものは、もうありません。 その代わり「何が起きたか」は、こちらが読まないと分からないまま進みます。

まとめ

2つの違いは、突き詰めると1つだけです。
ループを、人が手で運ぶか(対話型)/AI が自分で回すか(エージェント型)。

part 3 ― 具体例で見る(写真を半分の大きさにする)

お題は「フォルダの中の写真を、まとめて半分の大きさにする」。よくある雑用で、手でやると1枚30秒、100枚なら1時間近くかかります。 同じお題を、2つのやり方でやってみるとどうなるかを、上から順に見ていきます。

対話型コーディングでやると

  1. チャットの AI に「Mac で写真を半分の大きさにする Python(プログラミング言語の1つ)を書いて」と頼む
  2. コードが返ってくるので、コピーしてファイルに貼り、保存する
  3. ターミナルで動かすと、エラーが出る(写真を扱う道具が、まだ入っていなかった)
  4. エラーの文字をコピーして AI に貼ると、「先にこれを入れてください」と返ってくるので、入れる
  5. もう一度動かすと、今度はフォルダの名前が違うと言われる。また貼って、聞いて、直して、動かす
  6. ようやく動く

AI との往復が3回、コピーと貼り付けが6回以上。手間はかかりますが、何が起きたかは全部目の前で見えます。

エージェント型コーディングでやると

  1. 「このフォルダの写真を半分の大きさにして、別のフォルダに入れて」と頼む
  2. AI がフォルダの中を見て、何枚あるか、どんな種類の写真かを調べる
  3. コードを書いて、自分で動かす
  4. 写真を扱う道具が足りないと気づき、「入れていいですか」と聞いてくるので、許可する
  5. フォルダの名前の違いにも自分で気づいて直し、「100枚を小さくしました」と報告してくる

あなたとの往復は0回、押したのは許可のボタン1回だけ。速い反面、途中で何が起きたかは、読み返さないと分かりません。

速い方が優れている、という話ではありません。 対話型は遅いぶん、エラーの意味を1つずつ自分で見るので、次に同じ壁に当たったときに分かります。 エージェント型は速いぶん、中身を知らないまま動くものが手に入る、ということでもあります。

part 4 ― どちらから始めるか

おすすめは、まず無料のブラウザのチャット(対話型コーディング)から試すことです。 いきなりエージェント型から入ると、何が起きているか分からないまま自分の Mac を操作されることになり、落ち着きません。

  1. 1

    まず対話型で試す。無料で始められ、Mac に何も入れなくて済みます。エラーの意味も1つずつ目で見られます。

  2. 2

    往復が面倒になったら、エージェント型へ。有料の契約が要りますが、コピーと貼り付けの往復から解放されます(始め方は LAB 002)。

  3. 3

    慣れたら、両方を使い分ける。ちょっと聞きたいことは対話型、ファイルをまたぐ作業はエージェント型、というように。

実際に、対話型から始めてエージェント型へ移る流れで進めました。 2026年1月〜6月は対話型コーディング(Gemini のチャット)でコードを書いてもらい、動画の管理やクイズの道具を作りました。 そのころ分かったことは はじめての道具箱 にまとめています。 そして2026年7月に AI エージェント(Claude Code)を入れて、エージェント型コーディングに移りました。

part 5 ― 始める前に知っておきたい注意点

「エラーが出ない = 正しい」ではありません(動いた ≠ 正しい)

いちばん大事な注意点です。エラーが出るのは、実は親切な失敗です。止まってくれるので、すぐに気づけます。 怖いのは、エラーを出さずに、黙って間違えていることです(サイレントエラーと呼ばれます)。

たとえば写真の例で、「100枚を処理しました」と出て、エラーも無く終わったとします。ところが開いてみると、縦だけ半分になっていた——というようなことが起こります。 エラーが出ないので、確かめない限り気づけません。

エラーが出た場合 ―― 親切な失敗 動かすと、エラーで 止まる すぐに気づける 返事を読んで、直せばいい エラーが出なかった場合 ―― 黙って間違える 「100枚を処理しました」 エラーは出ない 開くと、縦だけ 半分になっていた 確かめない限り、 気づけない

図の見方:上の段はエラーが出て止まった場合で、すぐに気づき、返事を読んで直せます。下の段はエラーが出ずに終わった場合で、結果がおかしくても、開いて確かめない限り気づけません。

だから、最後は自分の目で1つ確かめる

AI が「できました」と言っても、それは報告であって、確かめた結果ではありません。 写真なら1枚を開いてみる、表なら1行を見てみる——最後に自分の目で1つ確かめるだけで、黙って間違えているものの多くに気づけます。

ほかに覚えておきたいこと

NEXT

次の一歩

まずは無料のチャットの AI に、こう打ってみてください。

Mac で使える、ごく短い Python を1つ書いてください。
プログラミングは初めてです。
どこに貼って、どうやって動かすかも、順番に教えてください。

一度でも自分の Mac で何かが動いたら、この記事の役目は終わりです。往復が面倒になってきたら、エージェント型の出番です。

LAB 002

Claude Code をデスクトップで始める

エージェント型コーディングを、見慣れたアプリの画面から始めます。 →

※ 製品の名前・料金・できることは変わります。覚えてほしいのは製品名ではなく、「ループを誰が回すか」という見方の方です。