FRL 自由研究ラボ

はじめての道具箱 — AI への頼み方

チャットの AI とエージェントの違い

— 動かして確かめるのは、だれか —

AI にコードを書いてもらう方法には、ブラウザのチャットで頼む形と、AI に Mac を直接操作させる形があります。2つの違いは、突き詰めると「動かして確かめる人」の違いです。あわせて、向いている場面と、気をつけることを説明します。

この記事を読むとできること

  • 2つの違いを、「動かして確かめるのはだれか」の一点で説明できます
  • 場面に合わせて、どちらで頼むかを選べます
  • それぞれで気をつけることが分かります

想定している使い方

この道具箱は、ブラウザで開くチャット型の AI(Gemini や ChatGPT など)にコードを書いてもらい、 それを自分の Mac に保存して動かす使い方が前提です。この項目だけは、比べるために、AI に Mac を直接操作させる形(エージェント)も取り上げます。説明は Mac 前提です。

  1. 2つの違いとは
  2. 同じ作業で比べる
  3. 向いている場面
  4. それぞれで気をつけること
  5. よくあるつまずき
  6. AI への伝え方
  7. 確かめ方
  8. 関連する項目

読む目安:約10分 ・ 道具箱の項目 E6(AI への頼み方)・ 図3枚

2つの違いとは ―― なぜ、頼む前に違いを知っておくのか

チャットの AI とエージェントの違いは、突き詰めると1つです。それは、書いたコードを動かして確かめるのが、あなたか、AI かという点です。チャットの AI では、コードを動かして結果を見るのはあなたの役目です。エージェントでは、AI が動かして、結果を読んで、直すところまで進めます。

AI にコードを書いてもらう頼み方には、大きく2つあります。ひとつは、ブラウザで AI とチャットをして、返ってきたコードを自分が Mac に貼って動かす形です。チャットの AI は Mac に触れないので、仕事はコードを書くところまでです。保存・実行・結果の確認は、すべてあなたの手作業です。

もうひとつは、エージェント(AI が Mac の中のファイルを自分で読み書きし、コードを動かし、出てきたエラーを読んで直すところまで進める使い方)です。エラーとは、うまく動かなかったときに出る、英語の知らせのことです。

コードは、動かす、エラーを読む、直す、また動かす、というくり返しで仕上げます。この記事では、このくり返しを「往復」と呼びます。往復を、チャットではあなたが運び、エージェントでは AI が回すので、頼み方が変わります。チャットの AI は、動かしていないので、コードが動くかを知りません。エージェントは、動かして結果を見るので、やりたいことを伝えれば進みます。

チャットの AI ―― あなたが運ぶ チャットで頼む コードが返る あなたが貼って 保存して動かす あなたがエラーを 読み、AI に貼る 確かめるのは あなた エージェント ―― AI が回す やりたいことを 文章で頼む AI が書いて 自分で動かす AI がエラーを読み 自分で直す 確かめるのは AI どちらの段にも、動かす・エラーを読む・直す、の往復があります。

図の見方:上の段はチャットの AI、下の段はエージェントです。上の段では、動かして結果を読むのはあなたです。下の段では、往復の全部を AI が回します。2つを分けるのは、濃い箱の「確かめる人」だけです。

同じ作業で比べる ―― 写真の縦と横を、まとめて半分にする

フォルダの中の写真を、まとめて、縦と横の長さをそれぞれ半分にする作業で比べます(ファイルの容量ではなく、写真の縦横の長さのことです)。

チャットの AI に頼むと、まずコードが返ってきます。そこから先は、あなたの作業です。コードを保存し、ターミナル(文字で命令を打ち込むためのアプリ。「アプリケーション」→「ユーティリティ」の中にあります)で動かすと、写真を扱う道具がまだ入っていない、という英語のエラーが出ます。それを AI に貼ると、「先にこれを入れてください」と返ってきます(道具を入れるとは、プログラムが使う部品を Mac に追加することです)。入れて動かすと、今度はフォルダの名前が違うと言われ、また貼って、直して、動かします。この例では、往復が3回、コピーと貼り付けが6回以上です。

エージェントに頼むと、AI がフォルダの中を見て、コードを書き、自分で動かします。足りない道具があると気づくと、「入れていいですか」と聞いてくるので、許可します。フォルダ名のずれにも自分で気づいて直し、「100枚を小さくしました」と報告が来ます。あなたが押したのは、許可のボタン1回です。

チャットの AI は遅いかわりに、エラーを1つずつ自分の目で見ます。エージェントは速いかわりに、読まないと、分からないまま動くものが手に入ります。

チャットの AI ① AI がコードを書く ② あなたが貼って動かす ③ あなたがエラーを読む ④ あなたがエラーを貼ると、AI が直す エージェント ① AI がコードを書く ② AI が自分で動かす ③ AI が結果を読む ④ AI が自分で直す

図の見方:上から下へ、往復の4つの動きが並んでいます。濃い箱は、あなたの手作業です。チャットの AI では動かすこととエラーを読むことが、エージェントでは4つとも AI が進めます。

向いている場面 ―― 目的で選ぶ

場面ごとに見ます。

まず触ってみたいとき

チャットの AI:無料の枠ですぐ始められ、いちばん向いています。

エージェント:Mac に入れる作業と有料の契約が要り、最初の一歩には重めです。

意味を知りたい・勉強したいとき

チャットの AI:1つずつ目で見られ、いちばん向いています。

エージェント:速すぎて、置いていかれやすくなります。

数十行ほどの小さな道具を作るとき

チャットの AI:往復が数回で済み、十分使えます。

エージェント:頼んで待つだけで、いちばん向いています。

複数のファイルにまたがる直しをするとき

チャットの AI:運ぶ量が多すぎて、避けたほうがよいです。

エージェント:得意な領域です。

作ったものを育て続けるとき

チャットの AI:どれが最新の版か分からなくなり、避けたほうがよいです。

エージェント:直した履歴を残しておく作業(あとで元に戻せるようにするためのもの)も任せられます。

迷ったら、無料で始められるチャットの AI で、短いコードを1つ動かしてみます。往復が面倒になったら、エージェントに移ります。いきなりエージェントから入ると、何が起きているか分からないまま、Mac を操作されるためです。

それぞれで気をつけること

チャットの AI では、あなたが文字を運ぶので、運ぶ途中の事故に気をつけます。貼る文章に、パスワードや個人の名前が混ざっていないかを読むこと。長いコードが途中で切れたり、貼り間違いで前の版と混ざったりすると、貼り直す往復が何度も増えます。AI は動かしていないので、「これで動くはず」という言葉は保証になりません。結果を貼って確かめます。

エージェントでは、AI が Mac を触れるので、触ったあとの事故に気をつけます。消す・置き換える操作は、許可を求める画面が出たときに、内容を読んでから押します。ファイルを増やすだけの作業は、流して構いません。触らせる範囲は決めておき、最初は練習用のフォルダ1つだけを触らせます。エージェントに移ると、貼る作業そのものが無くなります。中身を読まないまま完成しやすいので、ときどき「いま何をしたのか」を説明してもらいます。

どちらにも共通するのは、動いたことと、正しいことは別だという点です。

チャットの AI(あなたが運ぶ) 貼る前に、秘密が混ざっていないか読む コードの途切れ・貼り間違いに注意する AI は動かしていない。結果を貼って確かめる エージェント(AI が回す) 消す・置き換える操作は、許可を読んで押す ときどき「何をしたか」を説明してもらう 触らせる範囲を決め、練習用のフォルダで試す どちらでも共通 動いたことと、正しいことは別。自分の目で確かめる。

図の見方:上の段が、チャットの AI で気をつけること、下の段が、エージェントで気をつけることです。いちばん下の濃い箱は、どちらにも当てはまる決まりです。

よくあるつまずき

起きていることから探します。

起きていること 原因 どうするか
チャットの AI に直してもらっても、同じ所で止まる AI は動かしていないので、出てくる直し方が当たっているとは限らない 動かして出た文字を、そのまま貼って伝えます。秘密が混ざっていないか、貼る前に読みます
エージェントに頼んだら、思っていない場所のファイルまで変わっていた 触ってよい範囲を決めずに頼んだ 頼むときに、触ってよい場所と、触らないものを言います。最初は練習用のフォルダ1つで試します
エージェントが作ったものが壊れたが、何をしたのか分からず、手が出せない 中身を1行も読まないまま、完成していた ときどき、何をしたのかを説明してもらいます

AI への伝え方

※ チャットの AI は Mac を見られないので、頼むのは「コードを書いて」、困ったら出た文字を貼って伝えます。この項目だけは、エージェントに頼む見本も載せます。 コツは、いま頼んでいる相手が、動かして確かめられるかどうかを意識することです。 下の文は言い方の見本で、そのまま写すものではありません。

① チャットの AI で、初めて短いコードを試すとき

「Mac で、フォルダの中の写真を、まとめて縦と横の長さをそれぞれ半分にする、短い Python(プログラムを書くための言葉の1つ)を書いてください。プログラミングは初めてです。どこに貼って、どうやって動かすかも、順番に教えてください」

② チャットの AI に、動かした結果を伝えるとき

「さっきのコードを自分の Mac で動かしたら、次の文字が出て止まりました(ここにエラーの文字を貼る)。意味と、直し方を教えてください。パスワードや個人の名前が入っていた所は、伏せてあります」

③ エージェントに作業を頼むとき

「この練習用のフォルダの中の写真を、縦と横の長さをそれぞれ半分にして、別のフォルダに入れてください。元の写真は、消さないでください。このフォルダの外には、触らないでください。消したり、置き換えたりするときは、先に聞いてください」

④ エージェントの作業のあと、何が起きたかを知りたいとき

「いま何をしたのか、プログラムを知らない人向けに説明してください。消したものや、置き換えたものがあれば、必ず教えてください」

確かめ方 ―― 頼む前に、動かしたあとに

「できました」で終えずに、次の3つを見ます。

  1. 1

    頼む前に、「動かして確かめるのはだれか」を自分に聞く。チャットの AI なら自分、エージェントなら AI です。気をつける所が、貼る内容か、触らせる範囲かに分かれます。

  2. 2

    仕上がりを、自分の目で見て、期待した結果と並べる。写真の例なら、元の枚数と同じ数かを数え、1枚開いて、縦と横の長さが元の半分になっているかを、元の写真と並べて見ます。エージェントが「できました」と言ったときも同じです。

  3. 3

    何が起きたかを、自分の言葉で説明できるか見る。説明できないときは、AI に「何をしたのか」を説明してもらいます。エージェントでは、消したものや置き換えたものが無いかも確かめます。