FRL 自由研究ラボ

はじめての道具箱 — AI への頼み方

自分のデータを AI に丸ごと渡さない

— 相談に要る部分だけを選んで、要点にして渡す —

「データを見てもらえば、AI がうまく分析してくれる」と考えて、ファイルの中身を全部貼りたくなることがあります。けれども、丸ごと貼ると、見せたくないものまで渡り、答えもぼやけやすくなります。渡す前に見る3つの問いと、要点にして渡す手順を説明します。

この記事を読むとできること

  • AI に貼る前に、渡してよいものかを3つの問いで確かめられるようになります
  • ファイルを丸ごと貼る代わりに、手元で集計して要点だけを渡せるようになります
  • 渡せないものを、伏せ字(本物の文字を別の言葉に置き換えること)や抜粋に置き換える形が分かります

想定している使い方

ブラウザで開くチャット型の AI(Gemini や ChatGPT など)にコードを書いてもらい、 それを自分の Mac に保存して動かす使い方です。この記事の操作や画面の説明は、すべて Mac を前提にしています。

  1. 丸ごと渡さないとは
  2. 渡す前に見る3つの問い
  3. 要点にして渡す手順
  4. 渡さないものと、代わりの渡し方
  5. よくあるつまずき
  6. AI への伝え方
  7. 確かめ方
  8. 関連する項目

読む目安:約10分 ・ 道具箱の項目 E5(AI への頼み方)・ 図4枚

丸ごと渡さないとは ―― なぜ、貼る前に一度立ち止まるのか

「データを丸ごと渡さない」とは、自分のファイルの中身を、そのまま全部 AI に貼らずに、相談に要る部分だけを選び、要点にしてから渡すことです。理由は2つあります。ひとつは、見せたくないものまで一緒に渡ってしまうことを防ぐため。もうひとつは、要点にしたほうが、AI の答えが的に当たりやすいためです。

AI に相談するとき、説明のために手元のファイルを丸ごと貼ってしまいがちです。たとえば、勉強用のクイズアプリの成績ファイル(問題ごとに、解いた回数と合っていた回数を記録したファイル)を貼って、「私の弱点を教えて」と頼む場合です。

貼った文字は、チャットの AI を提供している会社のサービスに送られます。入力した内容の扱いはサービスごとに違うので、設定や利用規約を一度見ておくと安心です。大事なのは、送る内容を自分で選べる形にしておくことです。

丸ごと貼ると、パスワードや API キー(外のサービスを使うための合言葉)、ほかの人の名前や連絡先、ファイルを置いた場所の名前などが混ざっていても、気づかずに渡してしまいます。また、チャットには一度に入力できる長さの上限があり、長いデータは途中で切れることがあります。

✕ ファイルを丸ごと貼ると 成績ファイルを 丸ごと貼る 見せたくない物も 一緒に渡る 長すぎて、途中で 切れることがある 答えが、ぼやけて 的を外す ○ 要点にして渡すと 相談したい点を 決める 手元で集計して まとめる まとめたものを 読み返して選ぶ 要点だけを 渡す 例は、勉強用のクイズアプリの成績ファイルです。

図の見方:上の段は、そのまま貼った場合で、見せたくないものが混ざり、長さの上限にも当たります。下の段は、手元でまとめてから渡す場合で、渡すのは濃い箱の、読み返して選んだ要点だけです。

渡す前に見る3つの問い

貼る前に、次の3つを自分に聞きます。例は、成績ファイルをもとに「どの分野が苦手か」を相談する場合です。

1つ目は、AI に貼る文章に、人に見せたくないものが混ざっていないかです。成績ファイルは回数の記録だけに見えますが、ファイルを置いた場所の名前(Mac では自分のユーザー名が入ることがあります。読み方はこちら)や、書き足した個人的な一言が入っていることがあります。全件を読む必要はなく、見るのは貼る分(集計の結果や、形を伝える見本の数件)だけです。

2つ目は、相談したい答えに、それは要るかです。「どの分野が苦手か」を知りたいなら、必要なのは分野ごとの正答率です。1問ごとの細かい記録までは要りません。渡さないほうが、答えもはっきりします。

3つ目は、数える作業を、自分の Mac の中でできないかです。「分野ごとに、何回解いて何回合ったか」を数えるだけなら、データを AI に見せなくても、Mac の中で動くプログラムで数えられます。数える作業は Mac がします。AI に頼むのは、数えるプログラムを書くところと、結果を読んで「どう勉強するか」を考えるところです。

迷うときは、渡さないほうを選びます。足すのはあとからでもできますが、渡したものは取り消せないからです。

① 見せたくない物は? 貼る文章に、人に見せたくない物が 混ざっていないか ② 答えに要るか? 相談したい答えに、 それは要るか ③ 手元で数えられるか? 数える作業を、 Mac の中でできないか 混ざった物は外し、 要らない物は渡さず、数えられる物は先に数える。 迷うときは渡さない。足すのはいつでもできるが、 渡したものは取り戻せない。 例は、勉強用のクイズアプリの成績ファイルです。

図の見方:上から順に3つの問いを見て、いちばん下の濃い箱のとおりに、渡すものを減らしていきます。

要点にして渡す手順 ―― 決める・集計する・読み返す・渡す

要点にして渡すときは、次の4つの動きで進めます。

1つ目は、AI に何を相談したいかを、一文で決めることです。「分野ごとの得意・苦手を知って、次に何を復習するか決めたい」のように書きます。この一文が、あとで「何を渡すか」を決める物差しになります。

2つ目は、集計するプログラムを、AI に書いてもらうことです。ここでは、データそのものは貼りません。ファイルの「形」(どんな欄が、どんな順で並んでいるか)だけを伝えます。形を見せるには、実際の記録を1〜2件だけ、見せてよい内容に書き換えた見本にして貼ります。返ってきたプログラム(コンピュータへの指示書)は、Python というプログラム用の言語で書かれています。ターミナル(文字で命令を打ち込むアプリ)で実行する手順は、同じ AI に聞けば教えてもらえます(Python の役目はこちら)。

3つ目は、集計の結果を、自分で読み返すことです。出てきた表に見せたくないものが入っていないか、目で見ます。

4つ目は、相談の一文と、集計の結果を、並べて渡すことです。何を知りたいのかと材料の両方が届くので、答えがはっきりします。

1 決める 相談したいことを一文で 2 集計する Mac の中で数えて、表にする 3 読み返す 見せたくない物が無いか、目で見る 4 渡す 一文と結果を並べて貼る 見せたくない物が入っていたら、渡さずに、 集計の出し方を直してやり直す。 集計の途中の経過は、読み返すための材料なので、AI には渡しません。

図の見方:上から下へ4つの動きが並んでいます。濃い箱の「渡す」が、AI に何かが届く唯一の所です。いちばん下の点線の枠は、見せたくないものが見つかった場合の動きです。

渡さないものと、代わりの渡し方

渡したくないものが相談に必要なときは、そのまま渡さずに、形を保ったまま、中身だけを置き換えて渡します。

たとえば、コードにパスワードや API キーが書かれていたら、その部分を「ここにパスワード」のような言葉に書き換えてから貼ります。AI に要るのは「そこに文字が入る」という形で、本物の文字ではありません。場所の名前は、ユーザー名の部分だけを「ユーザー名」のような言葉に置き換えます。データの記録も同じで、中身を作り変えた見本の数件を貼れば、形は伝わります。

そのままは渡さない物 代わりに渡すもの パスワード・API キー 「ここにパスワード」と書き換える ファイルを置いた場所の名前 個人名の部分を伏せて、形だけ見せる 何百件もの記録 集計した表だけを渡す 個人的な一言・メモ 相談に要る部分だけを抜き出す 形は保ったまま、中身を置き換えるのが基本です。

図の見方:左の点線の箱が、そのままでは渡さないもの、右の濃い箱が、代わりに渡す形です。

筆者の体験メモ

2026年9月、エージェント型コーディング(AI が Mac の中で、直接コードを直していく使い方)に移ったあとのことです。筆者は、クイズアプリに「弱点の分析」を付けました。この機能は2段に分けてあります。前半では、成績を、AI を使わずに手元で集計し、科目や小分類ごとの正答率や、繰り返し間違えている問題を出します。後半で、その集計の結果だけを AI に渡して、文章にまとめてもらいます。成績のファイルそのものは、AI に渡さない決まりにしてあります。渡す文章に、保存場所の名前が混ざっていないかは、自動のテストで確かめています。

よくあるつまずき

起きていることから探してください。

起きていること 原因 どうするか
貼ったあとで、パスワードや個人名が入っていたと気づいた 貼る前に、目で見て確かめていなかった そのパスワードは、使っているサービスの画面で新しいものに変えます。次からは、貼る前の読み返しを手順に入れます
長いデータを貼ったら、AI の答えが前半のことしか触れていない 入力できる長さの上限を超えて、後ろが切れた 丸ごと貼るのをやめ、手元で集計してから、結果だけを貼ります
AI の答えが、「全体的にがんばりましょう」のような、当たり前のものだった 何を知りたいのかを伝えず、データだけを貼った 相談したいことを一文で書き、集計の結果と並べて渡します(「AI への伝え方」の②)
AI の返した集計プログラムを動かしたら、数が合わない ファイルの形を、AI が取り違えていた 数を、手で数えた少数の件と見比べます。ずれたら、形の見本を書き直して伝えます(「AI への伝え方」の①)
AI が、渡していない部分のことまで、見たように答えた AI は、足りない部分を想像で補うことがある 「渡した範囲だけで答えて。分からないことは、分からないと書いて」と頼みます(「AI への伝え方」の②)

AI への伝え方

※ この道具箱は対話型コーディング(ブラウザの画面でチャットの AI と文章をやりとりして、コードを書いてもらうやり方)の前提です。 チャットの AI はあなたの Mac を見られないので、頼むのは「コードを書いて」、困ったら出た文字を貼って伝えます。 コツは、「データそのもの」ではなく、「データの形」と「相談したいこと」を伝えることです。 下の文は、そのまま写すためのものではなく、言い方の見本です。

① 集計するプログラムを頼むとき(データは貼らない)

「成績を記録したファイルがあります。1件の形は、次の見本のとおりです(ここに、中身を作り変えた見本を1〜2件貼る)。このファイルを自分の Mac で読んで、分野ごとに、何回解いて何回合ったかを数えて、表にするプログラムを書いてください。ファイルの中身は、AI には送りません」

② 集計の結果を渡して相談するとき

「私が知りたいのは、次に何を復習すればよいかです。分野ごとの集計の表は、次のとおりです(ここに貼る)。この表に書いてあることだけをもとに、苦手な分野と、その理由を教えてください。表から分からないことは、分からないと書いてください」

③ コードを見てもらうとき(秘密を伏せて貼る)

「次のコード(ここに貼る)を直してほしいです。パスワードや API キーが入っていた所は、『ここにパスワード』と書き換えてあります。その部分は、そのまま残して、ほかを直してください」

④ もう渡してしまったことに気づいたとき

「さっき貼った内容に、パスワードが入っていました。これから、そのパスワードを新しいものに変えます。この会話のなかで、その文字を使った説明や例は、もうしないでください」

確かめ方 ―― 渡す前に、渡したあとに

「大丈夫そう」で貼らずに、次の3つを順に見ます。

  1. 1

    貼る文章を、最初から最後まで目で読む。パスワードや合言葉、個人の名前、ほかの人の連絡先、ファイルを置いた場所の名前が無いかを探します。見つけたら、置き換えるか、消します。

  2. 2

    貼る文章が、相談の一文に答えるのに要る分だけか見る。「これを消しても、答えは変わらないか」を1つずつ考え、変わらないものは外します。

  3. 3

    AI の答えが、渡した範囲の中の話か見る。答えのなかに、渡していない部分を見たように書いた箇所があれば、「AI への伝え方」の②のように、範囲を伝えて、もう一度頼みます。