AIエージェントことはじめ — LAB 004
AI に書かせた作業の記録が、自分のノートに勝手に溜まっていく。 そんな仕組みを、ターミナル(文字で命令を打ち込むアプリ)を触ったことがない人でも作れるように、ゼロから順番に説明します。 つまずいても戻れるよう、各手順に「ここまでできたか確認する方法」を付けました。 後編では、MCP(AI がほかのアプリとやりとりするための共通の接続方式)で Obsidian らしい操作をできるようにし、頼まなくても記録を書く状態にします。
この記事を読むとできること
想定している使い方
前編(LAB 003)で、Claude Code と Obsidian を入れ、AI がノートに1行書き足せるところまで終わっている前提です。 ターミナルから Claude Code を使います。説明はすべて Mac(macOS 13 以降)を前提にしています。
※ 「そもそもコーディングとは?」という段階の方は、先に LAB 001(コーディングとは何か) を読むと、この記事が何をしているのか分かりやすくなります。
読む目安:約12分 ・ 手を動かす目安:約30分(STEP 4・5)・ 全2回の後編
RECAP
前編では、Obsidian の Vault(ノートを入れるフォルダ)を作り(part 1)、Claude Code を準備し(part 2)、 Vault をフォルダとして触らせて、AI がノートに1行書き足せるところまで進めました(part 3・4)。ここまでで連携はもう成立しています。
前編 ・ part 3〜4
つなぎ方① フォルダとして触らせる
後編 ・ STEP 4
つなぎ方② Obsidian として触らせる(任意)
後編 ・ STEP 5
つなぎ方③ 毎回自動で書かせる
図の見方:上の段は、前編までの状態です。AI はノートに書けますが、書くのは頼まれたときだけなので、頼み忘れた日の記録は残りません。 下の段は、後編を終えた状態です。作業フォルダに CLAUDE.md(AI への置き手紙のファイル)を置いておくと、AI は頼まれなくても決まりを読み、直した内容をノートへ書き足します。
STEP 4 — 目安 15分 / つなぎ方② 任意
前編までで、AI はノートを「テキストファイルの山」として扱えます。 ここでは、「Obsidian のノート」として扱えるようにします。 ノートが少ないうちは違いを感じにくく、増えるほど効いてきます。
つなぎ方は次のとおりです。Obsidian の中に「MCP Connector」という差込口を作り、Claude Code が、その差込口へトークン(合言葉)つきで話しかけます。 この接続そのもの(Claude Code と差込口のあいだのやりとり)は、自分の Mac の中だけで完結します。AI が読んだ内容がどう扱われるかは、あとの「やらない方がいいこと」の②に書きました。
前編までと STEP 4 のあとで、できることは次のように変わります。
ノートを探す
前編まで(フォルダ):ファイル名と文字列の一致
STEP 4 のあと(MCP):タグ・リンク・意味の近さで探せる
今日の日誌に書く
前編まで(フォルダ):日付からパスを自分で組み立てる
STEP 4 のあと(MCP):「今日の日誌」で開ける(無ければ作る)
関連を辿る
前編まで(フォルダ):できない
STEP 4 のあと(MCP):そのノートを参照している側を辿れる
部分だけ書き換える
前編まで(フォルダ):ファイル全体を読んで書き戻す
STEP 4 のあと(MCP):見出しの下だけを狙って足せる
ここで出てくる「プラグイン」とは、アプリ本体に後から足せる「部品」のことです。 iPhone の App Store でアプリに機能を追加したり、ブラウザに拡張機能を入れたりするのと同じ発想で、 Obsidian という土台に「MCP Connector」という部品を差し込みます。 本体のプログラムを書き換えるわけではないので、合わなければその部品だけを無効化すれば元どおりです。
このプラグインはObsidian の中で動きます。別のサーバーを立てたり、ノートをどこかへ送ったりはしません。
差込口は自分の Mac の中(127.0.0.1=自分自身)にだけ開きます。
設定 → MCP Connector → アクセス制御(Access control) を開くと、 ポート番号(差込口ごとの番号。27200 から 27205 のどれか)とトークン(合言葉の長い文字列)が表示され、 Claude Code 用の設定をそのままコピーできるボタンがあります。
トークンは鍵です。ノートやメモに貼らない、コミット(git という別の仕組みで変更履歴として保存する操作)しない、画面共有中に開かない。 万一見られたら、同じ画面から作り直せます(古い方は無効になります)。
4-2 のボタンでコピーした場合は、それをターミナルに貼って Enter を押すだけで構いません。
ボタンが見当たらず手で組み立てる場合は、次のコマンドを実行します(ここにトークン の部分と、ポート番号を自分のものに置き換えます。
行末の \ は「次の行へ続く」という印で、3行で1つのコマンドです)。
--scope user は「このフォルダだけでなく、どこで起動しても使える」という意味、
--transport http は「Obsidian の差込口とは、Web と同じ http という方式でつなぐ」という指定です(どちらもそのまま写せば足ります)。
ここも会話画面の外、ふつうのターミナルで打ちます。
会話画面が開いているときは /exit で抜けてから打ってください(次の 4-4 の claude mcp list も同じです)。
obsidian はこの接続につける名前です(あとで消すときもこの名前を使います)。
Bearer の後ろの「ここにトークン」だけを、4-2 で受け取ったトークンに置き換えます。
"Authorization: Bearer …" 全体を囲んでいる "(引用符)は消さずに残してください。
claude mcp add --transport http --scope user obsidian \
http://127.0.0.1:27200/mcp \
--header "Authorization: Bearer ここにトークン"
claude mcp list
obsidian の行に Connected と出れば成功です。
会話中に /mcp と打っても状態を見られます。試しにこう頼んでみてください。
Obsidian のノートの中から「読書」に関するものを探して、
何が書かれているか3行でまとめて。
✓ ここまでの確認:
claude mcp list に Connected と出て、ノートを探してくる。
つながらない時に見る3つ
401 という番号が出ます)STEP 5 — 目安 15分 / つなぎ方③
ここまでは「頼めば書いてくれる」状態です。ですが人は頼み忘れます。 そして記録は、忘れた日から価値が落ちていきます。 最後の STEP で、頼まなくても書く状態にします。実は、ここがいちばん効きます。
仕組みは4つの段階のくり返しです。作業を始めると、Claude Code はまず CLAUDE.md を読みます。そのあと作業を進め、終わると頼まれなくても記録のノートへ追記します。これが頼むたびに繰り返されます。
作業フォルダに CLAUDE.md という名前のファイルを置くと、
Claude Code は起動のたびに、頼まれなくてもその中身を読みます。
毎回説明していたことを、ここに一度だけ書いておく——それだけの仕組みです。
置き場所は Claude Code を起動するフォルダの直下です
(前編の part 4 のようにコードのフォルダから起動するなら、そのコードのフォルダ。Vault の中で起動しているなら Vault の中)。
作り方は簡単で、会話画面で /init と打つとたたき台を作ってくれます。ファイルを自分で作る方法が分からなければ、下の内容を貼って「この内容で CLAUDE.md を作って」と Claude Code に頼めば作ってくれます。
中身は、次のような短い日本語で構いません。
ただし Vault: の行だけは、前編の part 1 で自分が決めた置き場所に書き換えてください
(書類フォルダ直下に、この記事と同じ名前 brain で作った場合はそのままで合いますが、
別の名前にした人は ~/Documents/(自分のユーザーフォルダの中の「書類」フォルダ)の後ろを自分の名前に置き換え、
iCloud Drive(Apple のインターネット上の保管場所)や Dropbox(同じ種類の別会社のサービス)に置いた人はさらに違う場所になります)。それ以外の行はそのまま使えます。
# このプロジェクトの決まり
## 記録の置き場所
作業の記録は Obsidian の Vault に書く。
Vault: ~/Documents/brain
書き込み先: 作業記録.md
## いつ書くか
- コードを1行でも変更したら、指示を待たずに追記する
- 見た目だけの変更・設定の変更も省かない
- 日付の見出しは、新しいものを一番上に置く
## 書かないこと
- パスワード・鍵・合言葉の値そのもの
- 「そういう値を移した」という事実までは書いてよい
コツは短く、命令形で、「いつやるか」を書くこと。 「なるべく記録してください」のような書き方では効きません。「1行でも変更したら、指示を待たずに」まで書き切ります。
CLAUDE.md は毎回全文が読まれます。だから何でも書き足すと、肝心の指示がぼやけます。 詳しい手順(ノートの名前の付け方、書式、失敗した時の対処…)は、別の場所に置いて その作業をする時だけ読ませるのが正解です。
.claude/skills/記録を書く/SKILL.md
この形で置いておくと、Claude Code は「記録を書く」場面になったときだけ読みに行きます
(この手順書のことを「スキル」と呼びます)。
置き場所は CLAUDE.md と同じく、Claude Code を起動するフォルダの直下です。先頭に . が付くフォルダは Finder(Mac でファイルを見るアプリ)では普段見えません(⌘ + Shift +「.」で見えます)。
CLAUDE.md 側には「詳しい手順は .claude/skills/記録を書く/ にある」と1行書いておけば十分です。
なお SKILL.md の冒頭には、「何の手順か・いつ使うか」を書く説明欄(description)を付けるのが基本です。自分で書かず、AI に「記録を書くスキルを作って」と頼むのが確実です。
何か小さな修正を1つ頼んでみて、こちらが何も言っていないのにノートへ追記されたら成功です。 追記されなければ、CLAUDE.md の書き方が弱いか、場所が違っています(起動したフォルダの直下にありますか)。
ワンポイント:CLAUDE.md は会話を始めるときに読まれます。作った(書き換えた)直後の会話には反映されないので、/exit で会話を終えて Claude Code を起動し直してから試してください。
✓ 完成: あなたは「直して」としか言っていないのに、直した内容が日付つきでノートに積み上がっていく。 半年後のあなたが、それを読んで助かります。
TROUBLE
うまくいかないのが普通です。ここに載っている8つで、だいたい片が付きます。 「起きていること」から、自分に当てはまるものを探してください。
起きていること:claude: command not found
原因:ターミナルがまだ新しい道具の場所を知らない
どうするか:⌘Q で終了して開き直す。それでも駄目なら 前編の part 2 をもう一度
起きていること:ノートが1枚も読めない/errno 81/system error -81
原因:iCloud の中を読む許可が無い
どうするか:フルディスクアクセス(Mac の設定にある、アプリに iCloud の中まで読ませる許可)を与えて⌘Q して開き直す(前編の part 5)
起きていること:追記したらノートの本文が消えた
原因:iCloud が中身を預けていて、実体が空だった
どうするか:Finder で「このMacにダウンロードを保持」。消えた分は Obsidian のファイル復元か Time Machine(Mac の標準のバックアップ機能)から戻す
起きていること:MCP が Failed のまま
原因:Obsidian が起動していない
どうするか:Obsidian を開く。差込口は Obsidian の中にある
起きていること:401(本人確認に失敗したことを示す番号)と出て断られる
原因:合言葉かポート番号が今のものと違う
どうするか:設定画面で現在の値を見て、claude mcp remove obsidian の後、STEP 4-3 のコマンドを今の番号・トークンで打ち直す
起きていること:プラグインが検索に出ない
原因:制限モードが入ったまま/別の名前で探している
どうするか:制限モードをオフにして「MCP Connector」で探す
起きていること:Vault の外のファイルを触ってくれない
原因:起動したフォルダの外は、既定では触らない
どうするか:起動時に --add-dir(読ませるフォルダを足す指定)で渡す(前編の part 4)
起きていること:頼まないと記録を書かない
原因:CLAUDE.md の場所か、書き方が弱い
どうするか:起動フォルダの直下に置き、「いつ書くか」を命令形で書く(STEP 5-1)
SAFETY
この連携で本当に怖いのは「誰かに攻撃されること」ではなく、 自分の道具が、自分の大事なものをうっかり外に出してしまうことです。 次の4つだけ決めておけば、当面は困りません。
ノートも、作業記録も、コミットの説明も、AI が残す文章はすべて後から誰でも読める場所です。 「鍵を保管場所に移した」という事実までは書いてよく、値は書かない。この線引きを CLAUDE.md に書いておきます。
AI に読ませた部分は、判断のためにサービス側へ送られます。
日記・体調・お金のように外に出したくないノートがあるなら、Vault を分けるか、
--add-dir(起動時に、読ませるフォルダを足す指定)で必要なフォルダだけを渡します。「全部見せておけば賢くなる」は、ここでは正しくありません。
MCP は便利なので、つい色々つなぎたくなります。ですが差込口は 外へ出ていく経路であると同時に、外から指示が入ってくる経路でもあります。 増やすときは1つずつ、「なぜ要るのか」を書き残してから。
許可を求める画面は、慣れると読まずに通すようになります。 増やす作業は流してよく、消す・置き換える作業だけは読む——そう決めておくと事故が減ります。 Obsidian の設定の中に、うっかり消したり上書きしたりしたファイルを元に戻せる機能があります(呼び方はバージョンで変わります)。 有効にしておくと、さらに安心です。
FAQ
書き換えの前に必ず許可を求められ、どこをどう変えるかも表示されます。加えて Obsidian 側にもファイル復元の機能があります。心配なら、最初のうちは練習用の Vault を別に作って試してください。
ここで作った連携は、Mac の中のノートを Claude Code が読み書きする形なので、iPhone では動かせません。ただし、前編の part 5 の方法で Vault を iCloud Drive に置いた場合は、結果のノートを iPhone の Obsidian で読めます(書類フォルダ直下に置いた場合は、Mac の中だけに残ります)。外出先で読み、家で書かせる、という分担になります。
この記事の範囲なら Pro(有料の個人向けプランのひとつ)で足ります。毎日長時間まわすようになったら上位プランを検討する、という順番で困りません。無料プランでは Claude Code が使えない点だけ注意してください。
読ませた部分は送られます。これは仕組み上避けられません。だからこそ「読ませる範囲を選ぶ」ことが実質的な防御になります。どうしても外に出したくない用途には、Mac の中だけで動く小さな AI を別に使う、という選択肢もあります。
Claude Code は、前編の part 2 で入れた2か所(~/.local/bin/claude と ~/.local/share/claude)を消すだけで元に戻ります(~/.local/ 全体は他の道具のものも入っているので消さないでください)。Obsidian も、アプリを消してもノートはフォルダに残ります。どちらも「戻れる」構成なので、気楽に試して構いません。
NEXT
つながったら、いきなり大きな仕組みを作ろうとせず、小さな用途をひとつだけ決めてください。 「直したら記録を書く」でも「読んだ本を1行足す」でも構いません。 続いた仕組みだけが残り、続かなかった仕組みは、どれだけ立派でも消えていきます。
CLAUDE.md に書く(忘れても効き続けます)LAB 005
AIが壊しても戻れるようにする(前編)
AI に任せる量が増えると、間違って壊されることもあります。そのときに元へ戻せるよう、git(変更履歴を残す仕組み)をひとりで使う方法を説明します。 →
※ 画面の名称やコマンドは、アプリの更新で変わることがあります。うまくいかない時は、各アプリの公式ドキュメントも併せてご確認ください。 この記事の手順は、書き手が自分の Mac で実際に組み立てたものをもとにしていますが、動作を保証するものではありません。
※ Windows でも考え方と STEP の並びは同じです(導入のコマンドが違い、macOS 特有のフルディスクアクセスの話は要りません)。