LAB 005 — GUIDE
— 大きく作らない、が一番の近道 —
ここまでの5本は、全部土台づくりでした。道具を入れ、戻せる仕組みを作り、 持ち出す守りを固め、複数の端末をつなげました。 ——次はいよいよ、何かを作ります。 最大の壁は技術ではありません。「何を作るか」です。
約30分
全部やる場合
4 STEP
手順の数
1つだけ
足すのはこれだけ
※ LAB 000〜 LAB 004 を終えている前提です。特にLAB 000 の「書く・動かす・読む・直す」ループを 使う場面が出てきます。
INTRO
ここまでの5本で、環境は一通り整いました。 AI に頼む方法を知り、壊れても戻せる仕組みを作り、外に持ち出しても大丈夫な守りを固め、 複数の端末をつなげました。つまずく理由が、もう技術には残っていません。
それなのに、ここで止まる人がいちばん多い場所でもあります。 理由は単純で、「何を作ればいいか分からない」からです。 これは経験の差ではありません。誰もが最初に通る壁で、 越え方も決まっています。
STEP 1 — 目安 10分
「何か作りたい」と考え始めると、たいてい大きすぎるものを思いつきます。 家計簿アプリ、タスク管理ツール、SNS——どれも世の中にすでにあり、 1人で作るには大きすぎます。
発想を逆にします。「作りたいもの」ではなく「困っていること」から探します。 困りごとは、あなたがすでに毎日体験しているので、探す必要すらありません。 思い出すだけです。
やることは1つだけです。AI に頼んで、一緒に思い出してもらいます。 自分1人で考えるより、対話にした方が数が出ます。
ここ1週間で「面倒だな」「毎回同じことをしているな」と
思った場面を、一緒に思い出したい。
質問を1つずつして、私が答える形で進めて。
最後に、出てきたものを箇条書きにまとめて。
質問の例:「毎朝いちばん最初にやることは?」「先週、同じ作業を2回以上やったことは?」 「『あとでやる』と思って結局やらなかったことは?」——大きさは気にしなくて構いません。 次の STEP で絞ります。
✓ ここまでの確認: 「面倒だと思ったこと」が5〜10個、箇条書きで手元にある。 この時点では、実現できるかどうかは考えなくて大丈夫です。
STEP 2 — 目安 5分
箇条書きができたら、1つだけ選びます。 全部作りたくなりますが、同時に2つ作り始めると、たいてい両方とも終わりません。 選び方には、目安が3つあります。
月に1回しか起きないことは、道具にしても元が取れません。作る手間の方が高くつきます。
「〜すると、〜になる」と一息で言えないものは、 まだ大きすぎます。言えるまで小さくします。
人に見せる・公開するは後回しにします。最初の1つは、自分専用で十分です。
全部に○が付かなくても構いません。 3つとも満たす候補が無ければ、いちばん惜しいものを選んでください。 完璧な候補を探すより、1つ選んで先に進む方が早く形になります。 選び直しは、いつでもできます。
STEP 3 — 目安 10分
決まったら、いよいよ AI に頼みます。ここで身構える必要はありません。 「仕様書」のような形に整える必要はなく、 困っている場面をそのまま話せば十分です。
これは LAB 000 で説明した エージェントに任せるやり方そのものです。 あなたが担当するのは「何を解決したいか」で、 文法や実装の細かい判断は AI に任せます。
実際に貼る文は、こんな短さで足ります。
こういうことに困っている:レシートを撮るたび、
自分で金額と店名をメモに書き写していて面倒。
これを解決する小さな道具を作って。
まずは動くものを見せて。細かい仕様は、
動かしながら一緒に決めていきたい。
AI が作り、動かし、結果を見せてきます。ここからは LAB 000 のループ (書く・動かす・読む・直す)が回るのを、隣で見ながら試す番です。 「思っていたのと違う」と感じたら、そのまま言葉にして伝えます。
動いた。でも店名がうまく読み取れないことがある。
レシートの上の方じゃなくて、金額の近くに
店名が書いてある形式も多いので、そこも見て。
✓ ここまでの確認: 自分の Mac の中で、実際にその道具が動いている。 「動いた」で終わらせず、実際の場面(本物のレシート)で1回試してください。 動いた ≠ 使えると、LAB 000 でも触れた通りです。
STEP 4 — 目安 5分 / この記事の山場
道具が動くと、必ず欲が出ます。「ついでにグラフも出せたら」「他の家族も使えたら」 「スマホからも見られたら」——1つずつはどれも良いアイデアに見えます。
ここで踏みとどまれるかが、最初の1個が完成するかどうかの分かれ目です。 機能が増えるほど、直すところも増え、壊れる場所も増えます。 「育てない」と決めることも、立派な設計です。
足したい気持ちを無理に消す必要はありません。思いついたことは、 Obsidian のノートに1行書き足すだけにして、その場では作りません。 本当に必要な機能なら、何日か経ってもまた欲しくなります。 一度も思い出さなかった機能は、そもそも要らなかった機能です。
「いつかやること」というノートに、今思いついた機能を
1行だけ書き足して。いま作るのではなく、
あとで見返すためのメモとして残したい。
これは実際に効きます。 動画を切って繋げるだけの道具、画面を2つだけに絞ったゲーム—— 機能を意図的に2つか3つに絞った道具ほど、結局は長く使い続けています。 「足りない」と感じることより、「複雑すぎて触るのが億劫になる」ことの方が、実際には多く起こります。
TROUBLE
| 起きていること | 原因 | どうするか |
|---|---|---|
| 困りごとが1つも出てこない | 慣れすぎて「面倒」だと気づいていない | 家族や同僚に「何が面倒?」と聞いてみる。他人の視点だと出やすい |
| 候補がどれも大きすぎる | 「アプリ」を作ろうとしている | 「作業を1つ減らす」だけに絞る。名前を付けられるほど大きくしない |
| 思ったものと違うものができた | 最初の説明が曖昧だった | 直すのではなく、違いを言葉にして伝え直す(STEP 3) |
| 完成する前に飽きてしまった | 機能を足しすぎて大きくなった | STEP 4 に戻り、今ある機能だけで一度「完成」と決める |
| 作ったのに、1回しか使っていない | STEP 2 の「週3回以上」を満たしていなかった | 気にしなくてよい。次はその条件で選び直す。1個目はそのために作った練習でもある |
| AI が勝手に機能を増やしてくる | AI は「良かれと思って」広げがち | 「今はそれを足さないで。まず動くものを見せて」とはっきり伝える |
FAQ
作れます。LAB 000 で触れた通り、文法は AI が担当します。あなたが持ち込むのは「何に困っているか」で、それはあなた自身がいちばん詳しい分野です。
道具の大きさによりますが、STEP 2 の目安(1文で言えること)を守れば、最初の版は1〜2時間で動くことが多いです。動かないまま何日も悩んでいるなら、大きすぎるサインです。
失敗しても、LAB 002 で作った仕組みのおかげで、いつでも元に戻せます。気軽に壊してやり直して構いません。それがこの仕組みを先に作っておいた理由です。
その気持ちは、いったん脇に置いてください。最初の1個は自分専用と割り切ると、見た目や汎用性に悩む時間が丸ごと減ります。人に見せたくなるのは、育ってからで十分です。
はい。STEP 1〜4 は、いくつ作っても繰り返し使える手順です。数が増えたときの悩みは別にあります——それは次の記事の話です。
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まず1つ、今日困ったことを AI に話しかけてみてください。 完成させることより、「困りごとから道具が生まれる」という感覚を1回体験することが目的です。
LAB 006(準備中)
AIの「できました」を信じない
道具を1つ作ると、次に困るのは「本当に直っているか」です。 AI は「できました」とよく言いますが、それを鵜呑みにしない仕組みを作ります。 合否を人ではなく、機械に決めさせる話です。
※ 作る道具の内容や難易度によって、かかる時間は変わります。この記事は筆者が実際に試している進め方をもとにしていますが、結果を保証するものではありません。